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「ふ、ふざけるな!」ネリの“裏切り”に温厚な山中慎介が腰を浮かし…井上尚弥と東京ドーム決戦「なぜ悪童ネリはここまで嫌われたのか?」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/03/14 11:04
5月6日に東京ドームで対戦する井上尚弥とルイス・ネリ。記者会見では山中慎介さんとネリの“再会”にも注目が集まった
「ちょっとネリのところに行ってきますわ」
あれから6年。6日に開かれた記者会見には山中さんも顔を見せていた。会見が終わった直後、横に立っていた山中さんが「ちょっとネリのところに行ってきますわ」とボソッと口にしてネリに近づくと、通訳を介して言葉を交わした。
山中さんを見つけたネリは真っ先に「あなたのキャリアをあのような形で終わらせてしまって申し訳ない」と謝った。山中さんは「いまは僕のほうが体重はあるよ」と冗談でなごませ、「いま何キロくらい?」と聞くと、ネリは「60キロにセーブしている。節制している」と説明した。「いい試合を期待していますよ」とネリの肩に手を掛けて微笑んだ山中さんは、どこまでも気遣いの人だった。
大橋ジムは今回の試合にあたり、ネリに対して厳しい事前計量とドーピング検査を課すという。ネリが1ポンドでもオーバーすれば、井上はリングに上がらない。ファイトマネーも支払われない。禁止薬物が検出されたとなればもはや論外だ。大橋秀行会長はそう明言した。
東京ドームに集まるであろう5万5000人の観衆はあなたを敵視し、井上によって成敗される姿を心待ちにしている。そのことについてあなたはどう思うのか? そのような趣旨の質問を受けたネリは次のように答えた。
「私がリングに上がれば観客は消える。それはメキシコでも日本でも同じだ。日本での試合はやりやすい。ナーバスにならなくて済むからだ。メキシコでは家族、支援者が見ているからナーバスになる」
6年前、23歳だったネリは山中をKOし、ファンの憎悪を一身に浴びながら両国国技館をあとにした。29歳になったネリは“モンスター”井上を相手にどんな勝負を挑むのだろうか。そして私たちは、試合を終えて東京ドームを去りゆくネリに対し、どんな感情を抱くことになるのだろうか。