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日大アメフト《悪質タックル問題》で“消えた天才QB”が「廃部」に思うこと…「卒業した後の方が人生は長い」「“今”にとらわれず俯瞰的に」
posted2024/02/18 11:06
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph by
Naoki Kitagawa
日大フェニックスでエースQBとして激動の4年間を過ごした林大希。
現在は会社員として勤務の傍ら、2023年の夏からは東海大のコーチとして大学フットボール界へと復帰した。
1年生としては史上初となる年間最優秀選手賞を受賞しながら、その後は“悪質タックル問題”に端を発した様々な困難の中でプレーしてきた林。
4年時には再び甲子園ボウルへの切符をつかみ、3年ぶりにエースナンバーの背番号「10」を身につけて試合に出場。当日はリーグ優勝決定戦で痛めた肩に痛み止めのブロック注射を打ち、満身創痍の中でもあったが、タッチダウンパスも決めた。結果的に試合は24-42で敗れたが、類稀な存在感を示した。
紆余曲折あった日大での4年間。嵐のような日々の出来事を乗り越え、「フットボールはやり切った」と思った。
突然、あれだけの喧騒の中に放り込まれたことも理由なのだろう。社会人で自らプレーする動機は、見出せなかった。
恩師のもと、日大でコーチを務めていたが…?
卒業後は日大のコーチとして恩師の橋詰功監督(現同志社大監督)とともに後進の指導に当たっていた。しかし2021年の夏前に橋詰監督の退任が決まると、コーチ陣も全員、同様に退任となった。
フットボールの世界から弾き出された格好になった林は、当時の気持ちを振り返る。
「そもそも僕はフットボールがめちゃくちゃ好きだったわけではないんです。だから、フットボールができないこと自体はそんなにダメージではなくて。ただ、小さいときからずっと競技をやってきて、仲間たちがいて、居場所があったことが嬉しかった。社会人になればそういう環境がフットボール以外の部分で作れると思っていたんです。でも、それがなかなか見出せなかった。そこが辛かったです」