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「キャリア5年目でそんな偉そうなの?」それでもウナギ・サヤカがレジェンドから認められる理由…“400万円超”自主興行の参加選手もスゴい
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/01/06 17:01
ZERO1のリーグ戦「火祭り」にて、会場の子どもたちから声援を送られるウナギ・サヤカ
「ご乱心」にも程がある…聖地での自主興行
死ぬんじゃないかと思って臨んだ7月を生き抜いて、ウナギは新たな目標を立てた。自主興行の開催だ。手元には全財産407万7000円。これを興行に使おうと考えた。タイトルは『殿はご乱心~1番金星~』。
女子選手単独の自主興行といえば、200~500人規模の会場が主流だ。しかしウナギが選んだのはキャパ1000人を超える“聖地”後楽園ホール。全日本プロレスの協力で会場を押さえ、1月7日に開催する。デビュー記念日が1月4日だから、キャリア5周年を迎えてすぐでもある。それにしても、いきなり後楽園とは「ご乱心」にも程がある。
「一生懸命貯めてきたお金を何に使うか考えたら、後楽園しかないなと。普通のことやってもつまんないでしょう。今は後楽園の集客に苦戦する団体が多いって聞きますけど、満員にしたい。それだけのカードが組めると思う。ギャン期でその種はまいてきたはず」
開催を発表した10月のファンイベントで、ウナギはそう言っている。出場オファーのため、試合会場その他あらゆる場所に乗り込んだ。それをYouTubeで逐一配信。結果、決まったメインイベントはウナギ・サヤカ&小波vs.鈴木みのる&田中将斗という豪華にして異色のカードだ。
あっという間に予算オーバーになったが…
ウナギが別人と言い張る謎の覆面レスラー「ダーク・ウナギ」も参戦し、さらに第1試合にもウナギが登場。マーベラスのエースである彩羽匠とシングルマッチを行う。1大会で彩羽匠と鈴木みのると田中将斗と対戦するレスラーなどウナギしかいない。完全にどうかしているが、だからこそやりたいのだ。
「今はネットで答えがすぐ出てくる。正解とか正論があって、それが正義なんですよ。でもプロレスはそういう世界じゃないでしょう。自分が思ったことをやればいいし、間違ってる人なんか誰もいない。というより、盛大な間違いもみんなで楽しめるような空間を作りたい」
全日本プロレスの諏訪魔、“デスマッチのカリスマ”葛西純も出場。ディック東郷、藤田ミノルという通が唸る人選も。もちろん、ウナギがギャン期で関わってきた女子選手たちにも可能な限りオファーした。
会場費、人件費などであっという間に予算オーバーになったのには焦った。急きょ、お祭りのように会場に名前入り提灯を飾ることにして資金を調達。「ひつま武士」と呼ばれるファンには足を向けて寝られない。