「情をかけてはいけないし、冷遇し過ぎてもいけない。仮に控えになっても、良い所で使う必要がある。ただ、調子や相手を考えて、本当に打てる場面か見極めないといかん。起用法を間違うと、プライドを傷つけてしまうし、関係性も悪くなる。ただ、一軍監督の評価は勝つこと。ナンボ人が良くても、勝てなかったら何にもならない」

　坂本はここ数年故障を繰り返し、丸は今季2割4分4厘と成績を落とした。その分、大卒1年目の門脇、高卒3年目の秋広優人がチャンスをものにした。投手陣に目を向ければ、戸郷翔征が2年連続12勝、山﨑伊織が初の2桁勝利を挙げ、赤星優志は8月以降で5勝（1敗）防御率1.36と安定感を見せた。全て25歳以下の新星である。

「来年の巨人は出てくると思うよ。若い子がだいぶ育ってきとるもん。あの辺をうまく使って波に乗れたらな。スタートが肝心やな。今年の阪神の村上（頌樹）のように、若い子はシーズン初めに好投して自信を持ったら、いっぺんにバーンと上がってくるもん」

「マスコミの活用も大事だと思う」

　他にも今季一軍で4勝の横川凱、二軍で7勝（0敗）防御率0.75の井上温人という両左腕など素材は揃っている。若手を開花させるために、阿部監督は何をすべきか。

「やっぱり、褒めて評価することやろうな。マスコミの活用も大事だと思うわ。キャンプで『今年戦力になる』とチラッと言うだけで、選手はいっぺんに変わるんや。それから、会った時に『良くなってるな』とか声を掛ける。それだけで全然気持ちが違ってくるんよ。星野（仙一）とか岡田（彰布）とか、勝つ監督は上手く選手を乗せてた」

　二軍監督時代には選手のレベルを考えて厳しく接したが、一軍監督になれば対処法を変えてくるだろう。

「悪いものは悪いとハッキリ言うてしまうと、巨人や阪神はマスコミに全部書かれてしまう。試合後、感情的に怒りたくなっても我慢したほうがいい。そこは阿部自身が選手、コーチ時代にいろんな経験をしているから、誰よりもよく知っているでしょう。原監督の良い所は取り入れて、悪い所は反対にする。それだけでいいと思う。ワシは、阿部監督は上手く行くと考えとるよ」

　阿部慎之助は現役時代、「リードが悪い」と結果論で酷評されながらも、見返してきた。監督としても名将の道を歩めるか。