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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「もうドリブルからして別格でした」フロンターレ鬼木監督が衝撃を受けた三笘薫と守田英正の話「非常に悩まされた選手」と語ったワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2023/10/07 17:57
川崎フロンターレに加入した2020年の三笘薫。当時から「別格だった」と鬼木監督は語る
「本当にそれでいいのかなって。ケガに対してしっかりケアしなきゃいけないという思いと、帰しちゃっていいのかなっていう思い。2日間で回復する可能性もなくはないし、少なくとも神戸に連れていくべきなんじゃないかって、そっちの考えのほうが膨らんできました。
ケガで交代しているわけですから痛いことはもちろん分かっている。本人に直接確認しようと思って、“やれるのか、やれないのかどちらだ”と聞いたら、そこうはもうハッキリと“やってみたい”と薫は言ったんです」
中2日で精いっぱいのケアと準備をした三笘はヴィッセル戦、後半スタートから途中出場している。その後は先発機会を増やしていきながらルーキーイヤーを駆け抜け、13得点12アシストの活躍で独走優勝に大きく貢献。ベストイレブンにも輝いた。
急にタフさを身につけたわけではない。自己課題に真正面から向き合い続けてきたからこその“やってみたい”であり、かつ、その姿をしっかりと見ていたからこそ鬼木は連れていくべきという考えに思い至ったのである。
あのときの守田は…
フロンターレの強さが際立ったこの2020年シーズン。三笘、旗手怜央、田中碧ら後に欧州に飛び出して、日本代表でも活躍する若手がフロンターレで才を伸ばしていた。そしてもう一人、忘れてならないのが流通経済大から加入して3年目の守田英正だ。4-3-3に基本フォーメーションを切り替えたこの年、守田は開幕当初、ベンチからスタートするほうが多かった。アンカーには3つ年下の田中が入った。副キャプテンを務め、責任感を強く持つ守田に対して鬼木はじっくりと話す時間をつくっている。
「あのときの守田は“今の自分だったら、ポジションを取られても仕方がない”と素直に認めていました。でもあるタイミングでアンカーに入ってからは、絶対にこのポジションを渡さないっていうくらいの熱量をプレーから感じました。1度足を痛めて(先発は)どうかなと思ったときも、コーチに“自分にとって今は勝負のときだから絶対に抜けたくない”と語ったそうです」
押しつけるのではなく、促す
鬼木の想像を上回っていくほどの反転攻勢。タフになっていくことでひと皮むけたのは守田もまた同じであった。レベルの高い選手が集まって競争する日々がそれを促進した。それは旗手にしても田中にしても同じことが言えた。