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“ドーピング陽性”木村ミノルへの処分は適切なのか? UFCではミルコやアリスターも…根深い禁止薬物問題の本質「パンチ力が2倍、3倍に」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2023/09/08 17:02

“ドーピング陽性”木村ミノルへの処分は適切なのか? UFCではミルコやアリスターも…根深い禁止薬物問題の本質「パンチ力が2倍、3倍に」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

以前から疑惑の目を向けられていた木村“フィリップ”ミノル。ドーピング陽性を受けて、『RIZIN.43』のロクク・ダリ戦は無効試合となった

 いずれの気持ちもわからないわけではないが、この裁定には首を傾げざるを得なかった。というのも、検査をしたのはRIZINであって、巌流島やKNOCK OUTではないからだ。前者は旧K-1時代と同じ検査をしていたというが、その検査で木村は“クロ”と判定されなかったという。であるならば、巌流島の裁定において木村は“シロ”でなければいけないのではないか。そうでなければ、今回のように仮に木村が自ら禁止物質の摂取を認めたとしても、自分たちが行なっている検査の意味がなくなってしまう。

アマチュアスポーツと比べて軽すぎるペナルティ

 また、半年という短い出場停止期間も物議を醸している。一部の現役選手からは「ちょっと試合間隔が空く選手と同じではないか」という意見も出ている。単純に比較することはできないが、オリンピックスポーツで発生したドーピングに対する処分とは雲泥の差がある。

 2016年のリオデジャネイロ五輪に出場し、男子グレコローマンスタイル59kg級で銀メダルを獲得した現RIZINファイターの太田忍は、自身のSNSでオリンピックアスリートが禁止物質を故意に摂取した場合のペナルティを赤裸々に記したうえで、自らが抱いた疑問を世間に問うた。

「4年間の活動停止、これまでの成績、記録を全ての剥奪、契約スポンサーへ多額の賠償金。一発で選手生命が終わります。今回の件、RIZINの“プロ格闘家”への処分は皆さんはどう感じましたか?」(原文ママ)

 昨年の世界選手権で初出場にして男子フリースタイル70kg級で金メダルを獲得し、両スタイルでの世界チャンピオンを目指す成國大志(MTX GOLDKIDS)は、大学2年時に出場した大会のドーピング検査で禁止物質が検出されたため、2年間の出場停止処分を受けた。風邪を引いたときのかかりつけの医者が処方した風邪薬に、禁止物質が含まれていたのだ。

 成國は日本スポーツ仲裁機構(JSAA)が間に入ったJADAの聴聞会にも出席している。その後、出場停止期間は1年8カ月に短縮されたが、処分中は他の部員との合同練習すら許されなかったという。たとえ故意ではなく、何気なく口にした薬であっても、厳格なドーピング検査を行っている競技だとこのようなペナルティを受けることがあるのだ。

 医者が処方した風邪薬や胃薬だけではなく、市販の薬の中にもWADAの基準に引っかかる成分が含まれているものもある。我々が何気なく口にする「葛根湯」にも、禁止物質に指定された“エフェドリン”が含まれている。

【次ページ】 UFCではミルコやアリスターも陽性に

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