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不起訴の山川穂高に西武は「無期限出場停止処分」これは一球団の問題ではない…NPBはなぜ動かないのか? “判例”となるバウアーのケース 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2023/09/05 17:02

不起訴の山川穂高に西武は「無期限出場停止処分」これは一球団の問題ではない…NPBはなぜ動かないのか? “判例”となるバウアーのケース<Number Web> photograph by KYODO

強制性交疑惑で不起訴処分が発表された西武・山川穂高に対して、球団は「無期限出場停止」処分を課した

 今回の球団処分の根拠となるのは、統一契約書の17条にある「模範行為」の規定への違反ということになるだろう。この規定では野球協約等の諸規則を遵守した上で「個人行動とフェアプレイとスポーツマンシップとにおいて日本国民の模範たるべく努力すること」を誓約している。

 強制性交容疑が不起訴となったとはいえ、今回の事件前後の一連の山川の行動は、明らかにこの「模範行為」規定に違反したものだった。さらには6月21日の西武ホールディングス(HD)の株主総会で出席者から「起訴、不起訴に関わらず、解雇を考えてもいいのではないか」と厳しい意見も出て、世間一般的にもハラスメントに対する厳しい姿勢が求められる。その上で被害を訴えている女性側と和解はしておらず、今後は女性側が検察審査会への不服申し立てを行い再捜査となる公算もあり、また民事訴訟に発展する可能性も残されている。そうしたことを総合的に判断して期限を決めずに無期限の出場停止という判断に至ったと推察される。

“判例”となるバウアー投手の”事件”とMLBの対応

 その一方で西武球団によるペナルティーは、西武に在籍する期間だけのものという考えがあるのも確かだ。一昨年に当時、日本ハムに在籍していた中田翔内野手が、チームメイトへの暴行で日本ハム球団から「無期限出場停止処分」を受けた。しかし9日後に巨人にトレードされたことで、日本ハムの下した「出場停止処分」は解除され、巨人ですぐに一軍の試合に出場したという経緯があった。

 そう考えると山川に対するペナルティーが果たして、西武球団によるものでよかったのか。球界全体として日本野球機構(NPB)がしっかりとした見解を示して、コミッショナーが処分を決定することが必要ではなかったのかというところは問われる部分だ。

 今回の山川の復帰に関しては、問題が表面化した直後から、ほぼ同じケースとして“判例”となるものがある。

 現DeNAのトレバー・バウアー投手が起こした“事件”だ。

 バウアーはロサンゼルス・ドジャース時代の2021年5月に女性への性的暴行疑惑で告発され、ロサンゼルス市警が捜査を行っていることが発表された。直後にメジャーリーグ機構(MLB)は独自調査を進めると共にバウアーを制限リストに入れている。翌22年2月には不起訴処分となったが、MLBは2シーズン相当の324試合の出場停止処分を決定。その後バウアーからの不服申し立てで制限リスト入りしていた99試合の一部を含めた194試合に出場停止は軽減され、23年の開幕から試合出場は可能となった。

山川の「無期限」とは、いつまでなのか

 しかしドジャースから契約解除されたバウアーと契約する球団はMLBにはなく、23年3月にDeNAが獲得を発表。今季の日本球界での活躍は周知の通りだ。

【次ページ】 山川の「無期限」とは、いつまでなのか

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