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慶応の監督が放った“決勝前日のある発言”に驚いた…TVに映らない本当の素顔「水をゴクリ飲んで沈黙」「帽子は取ってバッグは後ろ…を唱えて」
posted2023/08/25 06:01
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Naoya Sanuki
「調子に乗ってしゃべりすぎないように。ごめんなさい」
慶応の監督、森林貴彦は、そう言って小さく笑い、ペットボトルの水を一口ごくりと飲んだ。
決勝戦前日の囲み取材で「高校野球界で覆したいと思っている部分は?」と問われたときのことだ。
記者は見た…「言葉の選び方」
森林は常日頃から「慶応が勝って、高校野球を変えたい」と言い続けてきた。
水を口に含んだあと、森林は10秒ほど沈黙してから、軽く表情を引き締め、ゆっくりと語り始めた。
「今回だと、まだまだ髪型が話題になるとか、論議になるという状態で。そのことも含めて、高校野球は坊主頭だとか、高校野球は監督のサイン通り動くものだとか、高校野球で強くなるには、合宿所で生活して、食生活から管理してやっていくのが一番いいんだとか、高校野球界の常識って、あると思うんです」
森林は、自分のコメントが批判ではなく、あくまで提言として伝わるよう、慎重に言葉とトーンを選びながら話した。
「たとえば、うちは、髪は自由だし、寮はなくて基本的に通いです。また、監督がすべてを決めるとか支配するのではなく、自分で考える余地、決める余地がある。それは今までの高校野球の常識からは少し違う部分だと思うんで。うちが活躍することで、高校野球における多様性とか、チームの個性とか、もっともっと認められるようになればいいと思います。そのぐらいで」
やはり最後は、笑みで締めくくった。
「帽子は取って、バッグは後ろ」を唱えながら…
森林ははっきりとものを言うタイプだし、「発信しにくいことも、勇気を持ってやっていきたい」と語る。それだけに発言内容は、人によっては、おもしろくないと感じられる要素も多分に含まれている。ただ、森林の言葉には、不思議なほどに角がない。
このときの会見もそうだったが、森林の言動から、そこはかとなくユーモアが漂ってくるせいだ。