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あの慶應高vs横浜高「踏んだ、踏まない」誤審疑惑…現役審判員が証言する“意外なポイント”「映像が100%正しいわけじゃないんです」 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/08/04 17:00

あの慶應高vs横浜高「踏んだ、踏まない」誤審疑惑…現役審判員が証言する“意外なポイント”「映像が100%正しいわけじゃないんです」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

神奈川大会決勝で慶應高に敗れ涙を流す横浜高校の選手たち

  そうKさんに言われてこの夏の大会名簿を調べてみたら、例えば東京都高野連ではおよそ180人、全国最多レベルの予選出場校数を誇る神奈川県高野連には230人ほどの審判員が登録されていた。

「20代、30代の若い審判もたくさん登録されています。ベスト8ぐらいの試合でも今は若い人がジャッジしたりしています。大学に通いながら審判をやっている後輩たちもいるぐらいですから。

 むしろ同じ審判のベテランの方からジャッジについて言われるほうが、私なんかはこたえるかな。ありがたいアドバイスは本当にありがたいんですけど、重箱の隅をつつくようなことっていくらでも言えるんですよ。審判仲間ともよく話すんですけど、匿名のネットの批判なんかよりずっと傷つきますね」

ビデオ判定も…「映像が100%正しいわけじゃない」

 今回の件で話題に上ることの多かった、きわどいプレーのビデオ判定導入についても触れてくれた。

「実は私たち実際に現場でジャッジしている人間には、『映像が100%正しいわけじゃない』というのが実感としてあるんですよね」

 例えばセンター方向から投手の球筋を追うカメラの場合、たいていは何度か角度がついている。バックスクリーンを避けてその左右にカメラを置いて撮る場合が多いから、その分、映像では球筋に角度がついて見える。

「その角度がクセモノなんです。私が球審をした時なんですけど、右打者の外角のボールをストライクとジャッジしたものが、後から映像を見たらボール2つ分ぐらい外れて見えた。その試合最大の山場の場面でしたから、さすがに記憶に間違いがあるとは考えにくいんです。現実と映像って全然、違うことがあるんです」

 また、ある大きな大会では、走者の本塁突入時に「ラフプレー」が疑われるプレーがあった。塁審の3人はすべて「走者の足先が捕手を狙ったように見えた」とラフプレーの側に立ったが、映像を見ると、「これはちょっと微妙なんじゃないか」ということになったそうだ。

 ただ、3人の審判がいずれも「ラフプレーでは?」と判断したということは、一面的な映像だけでは見えない選手の仕草や動きが感じられた可能性が高いのではないか。もちろんケースバイケースではあるのだろうが、映像だけが正しいわけではないのだ。

【次ページ】 審判員が現場で気になる「球児の振る舞い」とは?

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