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「(バウアーより)運動神経が悪い選手はいない?」バウアーはなぜ、サイ・ヤング賞を獲れたのか「ようやく投球のメカニズムが理解できたよ」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKeisuke Kamiyama
posted2023/07/07 17:00
横浜スタジアムで取材と撮影に応じたDeNAのトレバー・バウアー投手。サイ・ヤング賞獲得にいたるまでに自らの投球術について語った
「'10年にカシオのカメラを買ってフォームの分析をしようとしたんだ。カメラを本塁、一塁、二塁、三塁、さらに上方にも設置して5カ所から撮影してね。でも、そのカメラは撮影時間が10秒くらいしかなくて、何度も撮影と投球を繰り返さなければならなかった。いろいろなカメラを探していて、父と僕がエッジャートロニックを手に入れたのは'15年のことだった」
それまでは、高解像度のデジタルカメラでも投手の手を鮮明に映し出せず、握りがどんな回転を生み出すかは想像の領域でしかなかった。ところが、エッジャートロニックは撮影速度が非常に速いうえに、より多くの光を捉えられるため、解像度が極めて高い。このカメラの性能は、握りと回転の関係性を可視化した。これはバウアー父子にとって革命的なことだった。
「ようやく投球のメカニズムを理解できたよ。それまでは指を動かすことでボールをリリースするとみんなが思っていた。人間が主体的にね。でも、違った。握りはボールがキャッチャーミットに向かっていくための“回路”に過ぎないんだ。投手は握りを変えることでボールの出口を変更し、変化を生み出す」
最新機器を得て、投球の仕組みを完璧に理解したのだ。そしてかつてグレッグ・マダックスが投げていたようなツーシームの実用化に成功する。必要な回転数が分かっていれば、そのレベルに達するためのスキルを身につければいいだけで、バウアーにとってそれは難しいことではなかった。このツーシームが威力を発揮したのは'16年からで、この年は12勝、'17年には17勝を挙げて一流投手の仲間入りを果たす。'18年はさらなる飛躍を遂げ、サイ・ヤング賞獲得のチャンスを迎える。その武器となったのはエッジャートロニックの力を借りて実用化に成功した「スイーパー」だ。
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