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「復活した怪物」花巻東・佐々木麟太郎のリアル評…対戦したチームが次々に証言“やはり恐ろしい”「ちょっとでもズレてしまったら…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph bySankei Shimbun
posted2023/06/10 11:21
佐々木麟太郎が再び量産体制に…対戦した監督&ピッチャーが証言する“恐怖”とは
麟太郎と「勝負を避ける」選択
仙台商と同じく内角高めのストレートを軸とした配球。なおかつ麟太郎の打球傾向を分析したうえで左中間をケアするシフトを取り、実際に第1打席ではその場所への鋭いライナーにセンターが追いついた。
花巻東と練習試合を頻繁に行い「手の内を知っている」と言う明桜の監督、輿石重弘ですら、2打席目まで注文通りに麟太郎を抑えたとはいえ肝を冷やすように振り返っていた。
「『ストレートを高めに投げよう』とバッテリーに伝えていたなかで、1打席目はちょっと真ん中高めと甘いボールでした。佐々木君は少しでもコースが甘いとスタンドまで持っていくバッターですからね」
この試合、明桜バッテリーは2点リードの5回2アウト二、三塁のピンチで麟太郎を申告敬遠。点差を3点に広げた7回2アウト一塁の場面でも、ボールカウントが先行すると不用意な勝負を避けるように一塁へ歩かせた。
勝負に徹し、花巻東に勝利した輿石が言う。
「申告敬遠は『申し訳ないな』と思いながらも……(苦笑)。見せ場を作ってはいけないバッターなので」
多くのバッターにとってウイークポイントとされる内角高めで攻められ、凡打だったとしても相手に脅威を与える。チャンスで打席に立てば勝負を避けられる。麟太郎はもはや、数字だけでは推し量れないレベルにまで到達している――そう判断できるのではないか。
はじまる最後の夏
だからこそ、普段はもろ手を挙げて称えることのない監督である父も、「波が少なくなってきた」と現在の息子を評すことができるし、なによりも、麟太郎本人も現状を前向きに捉えられている。
「バッティングは常に武器だと思っていますし、自信を持って練習しています。全打席いい結果を残せるのはいいことではありますけど、そうなるとは限りませんので」
監督の息子。1年春からスポットライトを浴び、浮き沈みを経験してきた。そして、3年生となった麟太郎は「泰然自若」を得た。
間もなく迎える最後の夏。
蓄積された力をボールに乗せる。放たれた打球はきっと、全国の脅威となる。
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