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「復活した怪物」花巻東・佐々木麟太郎のリアル評…対戦したチームが次々に証言“やはり恐ろしい”「ちょっとでもズレてしまったら…」
posted2023/06/10 11:21
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Sankei Shimbun
ライトへ、レフトへ、そしてセンターへ。
貫禄の打棒。
6月3、4日に行われた愛知県高野連主催の招待試合で、東邦、愛工大名電、至学館と強豪相手に4本のホームランを見舞った花巻東の佐々木麟太郎は、自身が持つ高校歴代トップの通算記録を134本まで伸ばした。
量産態勢の突入を予感させるには十分すぎるほどのパフォーマンス。この直後に開催される春の東北大会でも、大砲が描く豪快なアーチは約束事のような雰囲気すら漂っていた。
父(監督)の麟太郎評
6打数1安打、打率1割6分7厘。
これが、東北大会を2試合戦った成績である。佐々木はスタンドを驚嘆させる一発を披露することなく、春を終えた。
数字上では結果を残せなかった。しかし、バッティングの内容となると別だ。監督であり、父でもある佐々木洋が下した麟太郎の評価に悲嘆は皆無だった。
「だいぶ波が少ないように感じています。以前は状態がひどいと感じた時は本当にひどかったですし、練習でいろんなことを試してもいいのか悪いのかわからないようなところも見受けたりして、バッティングにズレが生じていたりしたんですが、そういうのが少なくなりましたよね」
思い起こせば、昨年の秋は監督が言う「ひどい状態」だったのかもしれない。
「ひどい状態」だった昨年の秋
今年のセンバツ出場を懸けた東北大会初戦の鶴岡東戦。麟太郎は4打数ノーヒット、2三振と見せ場がなく涙を飲んだ。ストレートを張っているところを相手バッテリーに見抜かれ、変化球でかわされてしまったことを含めこのように猛省していた。
「狙っていたボールを1球で仕留めないといけないなかファウルしてしまったり、バッティング自体のバランスだったり、足りないところが多々あるというか。なかなか納得できるバッティングではありませんでした」
そして、「自分の弱さを見つめ直したい」という言葉で結んだ麟太郎は、ひと冬越え成長を遂げた。通算ホームラン数を134本まで伸ばしたこともそうだが、それは同時に取り組みが間違っていないことも表している。