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今永昇太29歳はなぜWBCリリーフ“転向”を苦にしないのか? 本人が明かしていた「僕の場合、投げるという意味であまり大きな差はない」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/20 17:22
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の韓国戦に続きイタリア戦でも好リリーフを見せた今永。国際試合に強い左腕に準決勝以降も注目だ
「ペース配分を考える人はもちろんいると思いますが、僕の場合、先発というのは“初回から100%をどれだけつづけることができるか”なんですよ。僕はそれで9回まで行くことを目指している。リリーフも当然頭から100%で行くので、投げるという意味からすると、あまり大きな差はないんです。逆に途中から投げることで自分の目指すものを再認識させてもらっています」
“投げる哲学者”と言われる今永である。まだWBCでの戦いは終わってはいないが、今回の経験がどれだけ自身の糧となっているのか、シーズンで確認をしたい。
2022年キャンプ前に得た“無重力の感覚”
またWBCにおけるピッチングで特筆すべきは、今永のボールのスピン量だろう。糸を引いたようにスッと伸びていくストレート。MLBのデータサイトによれば、韓国戦で記録した毎分2678回転のストレートは、昨季、メジャーの左腕においてタナー・スコットが出した2560回転を超える数値だったという。
このような高い出力を手に入れることのできた鍵となっているのが、2022年のキャンプ前の自主トレで得た“無重力の感覚”だ。
「テイクバックからボールを持ちあげていくとき、肩の動きもあまり感じることなく、ただボールの重さだけを感じる“無重力の瞬間”があるんです。日常生活でいうと、けん玉だったり、また釣りだったらキャスティングのタイミングとでもいうのか、一瞬、力が抜けるじゃないですか。あの感覚に近いんですね。いつも力が入っていたところが力まずに済み、最後にただ力を入れるだけ」
試行錯誤の上に得た高い出力には弊害もあった。昨年はキャンプ中に体の方が耐え切れず左前腕を肉離れしてしまうアクシデントがあったが、今年はWBCに向け慎重を期し、主力がいる宜野湾キャンプではなく、若手中心の奄美キャンプでじっくりと調整をしてきた。
捕手・伊藤光の証言
果たして高回転のボールとはどういうものなのか。DeNAで今永のボールを受けてきた捕手の伊藤光は次のように証言する。