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M-1はお笑い界のダービーか、有馬記念か? 元騎手見習いの競馬芸人がつづる“光と影”「毎年、M-1後に多くの芸人が解散や引退を…」 

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松下慎平

松下慎平Shimpei Matsushita

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photograph bySankei Shimbun

posted2022/12/18 11:01

M-1はお笑い界のダービーか、有馬記念か? 元騎手見習いの競馬芸人がつづる“光と影”「毎年、M-1後に多くの芸人が解散や引退を…」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

筆者にとって忘れがたい思い出となっている2003年のM-1グランプリ。最年少コンビ・りあるキッズの安田善紀(後列右から4人目)は中学校の後輩だった

「M-1=ダービー説」を覆す錦鯉の存在

 一番手で候補に上がるのは、やはり日本ダービーだろう。

 毎年、ダービー目前になると「3歳馬○○○○頭の頂点が決まる!」といった言葉が紙面に躍る。一方、M-1も「エントリー総数○○○○組の頂点が決まる!」というキャッチで大会を盛り上げる。その総数をみても、今年のダービーが7522頭、M-1が7261組と非常に似通った数字を示しているし、ダービーが3歳限定のレースであることと、M-1の「コンビ結成15年以内」という縛りも共通していると言えなくはない。

 1993年、ウイニングチケットに騎乗してダービージョッキーとなった柴田政人氏の「ダービーを勝てたら騎手を辞めてもいい」という言葉が競馬界の名言として知られているが、実際には「勝てたら騎手を辞めてもいいくらいの気持ちで臨む」といった旨の発言が曲解されて広まったとのことだ。一方、M-1で過去3度ファイナリストになっている川瀬名人(ゆにばーす)は「M-1で優勝したら芸人をやめる」と前々から公言している。そして彼は、勝ったら本当にやめてしまうだろう。決してブラフでもポーズでもなく、彼は芸人としてのゴールをそこに見ているのだ。狂気ともいえるその信念は、M-1の持つ価値、数多の芸人にとっての存在意義の大きさを証明している。

 とはいえ、M-1をダービーと重ね合わせる見方に違和感が残るのも確かだ。その違和感を生み出すものの正体は、エントリー資格の「コンビ結成15年以内」である。そこに年齢制限は設けられていない。記憶に新しい2021年の王者・錦鯉さん(長谷川雅紀さんは優勝当時50歳だった)を、ダービーに出走するデビュー1年未満の3歳馬と同列に扱うのは無理があると感じてしまう。錦鯉さんのような悲願の王者と重なるのは、幾度もの挑戦の末に偉業を成し遂げたカンパニーやワンダーアキュートといった名馬である。

 そういった観点から、「M-1グランプリ=日本ダービー説」は一旦保留とさせていただきたい。

では、「グランプリつながり」の有馬記念は?

 次の候補として挙げられるのは、時期的なことを考えても暮れのグランプリ・有馬記念だ。奇しくもグランプリつながりでもある。

 有馬記念は、言わずと知れた1年の総決算であり、出走資格に年齢制限はない。2018年に障害王者のオジュウチョウサンが7歳で参戦してきたことなども考えると、キングオブコントやR-1グランプリの王者がしばしば参戦するM-1と通ずるところも多い。

【次ページ】 M-1は新馬戦でもあり、未勝利戦でもある

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