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「ジュニーニョと喧嘩して、罰金を喰らったことも…」今季で引退、鄭大世38歳が語る“エゴイスト”のサッカー人生「本当の自分は弱い人間でした」

posted2022/11/08 11:01

 
「ジュニーニョと喧嘩して、罰金を喰らったことも…」今季で引退、鄭大世38歳が語る“エゴイスト”のサッカー人生「本当の自分は弱い人間でした」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

今シーズンでの引退を発表した鄭大世(FC町田ゼルビア)。自身を“エゴイスト”と表現する38歳に川崎フロンターレ、ドイツ、韓国、そしてまた日本と渡り歩いたサッカー人生を振り返ってもらった。(全3回のうち、第2回)

text by

杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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Yuki Suenaga

 10月28日、今シーズンでの引退を発表した鄭大世(FC町田ゼルビア)。強靭な肉体から“人間ブルドーザー”の愛称でも親しまれた38歳のFWはクラブを通じて700字以上に及ぶコメントを残し、最後に「エゴイストなくせに馬鹿みたいに繊細で感情的な、こんな僕に関心を持ってくれてありがとうございました」と締めくくった。引退のメッセージに込めた思いとは? 本人にインタビューで聞いた(全3回のうち、第2回/前回は#1、続きは#3

心が死んでいました

――10月28日にFC町田ゼルビアから発表された引退メッセージの随所に複雑な心情がにじんでいたと思います。「本当に最後の試合まで苦しかった」という書き出しから気になりました。

鄭大世 町田では感情を顕にすることを抑制されていたので……。自分の感情を押し殺し、自分の課題だけに目を向けるようにしていました。それでも、僕は自己肯定感が低いから、チーム内のヒエラルキーを見ながら、若手がゆうゆうと試合に出るなか、サブの立場として劣等感を感じていたんです。心の余裕がなくなり、イライラすることもありました。周りにどなり散らしては、すぐに謝ったりして。心が死んでいましたね。現役引退のメッセージ文を書いているときも、2年間の苦しかった記憶がよみがえってきました。文章を削ぎ落とす作業を繰り返し、ようやく書き終えて、寝床に就くと、思い返したくない嫌な夢を見てしまった。できることなら、最後くらいは輝いていた時代の夢を見たかったんですけどね。

――ピッチの中では自信にあふれたパワフルなプレーを見せ、ピッチの外でも強気な発言をすることが多い印象を持つ人もいると思います。豪気なストライカーのイメージを持つファン・サポーターからすれば、鄭大世さんの意外な一面かもしれません。

鄭大世 ハッタリをかましていたんですよ。年齢を重ねていくうちに、自分が弱い人間だと気づきました。僕は打たれ弱いし、すぐに落ち込む。そして、自信もなくす。昔はそんな自分を隠そうとして、強く見せていました。最近、『「繊細さん」の本』(武田友紀著『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』 飛鳥新社)を読んで、HSP(Highly Sensitive Person)という言葉を知り、すごく当てはまると思ったんです。他人の目を気にするし、他人からどう思われているのかも気になる。例えば、飲み会では先に帰れない。自分がいないところで、周りの人に何を言われるかが気になるから。承認欲求が強くて、自己顕示欲が人一倍ある。だから、サッカーでお金を稼ぐと、いいクルマに乗って、いい時計を買うし、ブランド物を買っていた。自分自身に自信がないから。価値あるものを購入して、価値のある人間なんだと見せたかったんです。自分に価値があると思える人は物欲はないと思います。ようやくそれが分かるようになったので、物は買わなくなりましたけどね。いまは自分自身を価値がある人間だと思うようにしています。

気が小さいから人には当たれなくて、物に当たってしまう

――引退メッセージの中で自分のことを「エゴイストのくせに、馬鹿みたいに繊細で感情的」と表現していました。キャリアを振り返り、そう思える具体的なエピソードはありますか。

【次ページ】 監督が気分屋の僕をうまく乗せてくれていた

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