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センバツ当確の東北高で“まさかの大改革”…元巨人の新監督「ヒロシさん」の指導でエース・ハッブス大起が覚醒「本当に新しい感覚」
posted2022/10/23 08:01
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
8月。東北高校の会議室で選手を前に挨拶をした新監督の佐藤洋は、硬い表情をする選手たちに手を差し伸べるように告げた。
「監督さん、佐藤さん……なんだか堅苦しいな。どうしようか?」
少し考えたのち、新監督は自分をこのように呼んでほしいと選手に伝えた。
ヒロシさん、と。
エースのハッブス大起は、目を丸くしながら監督の第一印象を語る。
「いきなりそんな感じだったんで、選手からすればビックリするじゃないですか。でも、それがよかったんですよね。チームみんなで『ヒロシさん』って言えるんで」
呼び名、坊主、練習着…「改革」に批判も
監督に就任するやヒロシは自分の呼び名だけではなく、様々な改革に着手した。
まず、坊主が原則だった頭髪を節度ある範囲でフリーとした。酷暑だった夏休み中には、練習着をTシャツにハーフパンツとラフな格好を容認し、フリーバッティング中にはBGMを流す……さながらプロ野球の練習のような雰囲気がグラウンドに漂う。
東北高校と言えば、甲子園に春夏通算41回の出場を誇る名門である。ダルビッシュ有が2年生エースとして出場した2003年夏の準優勝など、全国での実績も申し分ない。それだけに、OBや関係者をはじめ保守層からの批判的な声もあったと、ヒロシは言う。
「今までにないことをやっているわけですから、そりゃあ、いろんな意見はありました。でも、結果を出しましたから」
そう東北高校はこの秋、試合で雑音を振り払ったのである。
宮城県大会決勝で、夏に東北勢初の日本一となり、優勝メンバーも多く残る仙台育英に勝った。東北大会の決勝では、このライバルの後塵を拝したものの準優勝。12年ぶりのセンバツを大きく手繰り寄せた。
長年抱えていた野球界への疑問
スクラップ&ビルド。
ヒロシの改革はまさにそれくらい大胆ではあるが、根底には新監督が長年抱えてきた疑問、使命感が込められている。
「僕は高校野球を変えたいんです」