F1ピットストップBACK NUMBER
角田裕毅「あんな声援は人生で一度もなかった」初めてのF1母国開催、自身のルーツ鈴鹿で遂げた2年目の成長
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2022/10/20 17:02
F1に昇格後、初めての母国GPに挑んだ角田。多くのファンの後押しを受け、リザルト以上に彼が得たものは大きい
だが、今年の日本GPは秋雨に祟られ、難しいコンディションとなった。日曜日の決勝レースはスタート直後にアクシデントと雨による水しぶきから、すぐさま赤旗が出された。中断中、角田はある行動を起こす。それはガレージを出てピットウォールにのぼり、雨の中、客席でレースの再開を待つファンに向かって手を振って、元気づけることだった。
「赤旗中断中は『早く始まらないかな』という気持ちでした。ファンの皆さんが大雨の中、ずっと待っていてくれたので、1分でも1秒でも早く再開してほしかった。でも、なかなか再開されなかったので、少しでも楽しんでもらえたらなと思って手を振りに行きました」
鈴鹿で得た新たな力
2時間後に再開されたレースで、アルファタウリが採ったタイヤ交換戦略は功を奏さず、角田は目標に掲げていたポイント獲得を果たせなかった。それでも、予選でチームメイトを上回ってQ2に進出。Q3進出はならなかったが、マシンの現状を考えれば実力以上の結果だったと言ってもいい。また角田は日本GP前に違反を犯してペナルティを受けたり、クラッシュするというミスを何度か犯していたが、日本GPでは3日間を通して、ミスを犯すこともなければ、ペナルティを受けることもなかった。
角田はその理由を次のように語った。
「コースを走っていて、あんなに声援を受けた経験は、これまで人生で一度もなかったので、ビックリしました。(レース再開時に)9番手でスタートしたのにポイントを獲得できなかったことは残念ですが、オーバーテイクも披露できたし、やれるだけのことはすべてやりました。本当にみなさんのおかげで初めての母国グランプリを楽しむことができました。毎ラップ毎コーナー、スタンドから多くの声援を送ってもらったことは、本当に力強かったし、感謝しかありません」
その言葉に、角田の成長がしっかりと刻まれていたように思う。鈴鹿から世界へ羽ばたいた少年は、F1ドライバーとして走った鈴鹿で、またひとまわり成長を遂げた。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。