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9歳でプロテスト合格…スターダム・AZMが“大人のチャンピオン”になるまで「“子供だから”が嫌だった」《20歳特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/10/18 17:02
10月1日に誕生日を迎えたAZM。20歳を記念して、バーにて撮影を行った
ただ2月のキッド戦は、挑戦者としてとにかく必死だった。ガムシャラに闘って、それをキッドに受け止めてもらった気がするという。「自分では、キッドを受け止めることができたかどうか分からないんですけど」とAZM。だがキッドにとってもAZMが特別な相手なのは間違いない。タイトルマッチに向け、キッドは新技を用意したのだ。その名も「エターナル・フォー」。永遠の敵という意味である。
「涙は、人が見てないところで流します」
AZMのニックネームは「AZMパイセン」。若いのにキャリアがある、そのギャップの面白さも込められている。だが今の試合ぶりからは、誇張なしで「パイセン」としての風格を感じる。また技の受けっぷりがいいから相手も映える。プロレスラーとしては、それも実力のうちだ。
「受けに関しては(岩谷)麻優さんを見習ってます。ロープワークは葉月ちゃん。速いし走り方がカッコいいんですよ。いろんな人のいいところを吸収したいです」
自分でなんでもできる、と突っ張らなくなったのも“大人のレスラー”だからだろう。試合中は「いてー!」と叫ぶし試合後は「疲れたー!」とへたり込む。けれど人前で涙は見せたくないという。
「同情されたくないんです。私が見てほしいのは“こんなに動き回る人がいるのか”とか“ロープの上を走れるの?”みたいなところ。本当に人間なのか! みたいな。そういう選手が弱みを見せて泣くのはおかしいなと。
実は泣き虫なんですけどね。涙はバックステージで、人が見てないところで流します。裏で泣いてるところを撮られちゃったこともあるんですけど」
「レスラーはあらゆる面で強くなきゃいけない」
チャンピオンになった今でも、本当は悔しいことばかりだ。10月6日で試合デビュー9年。同じ年にデビューしたのは彩羽匠、コグマ、夏すみれに小林香萌、山下りなと、スターダム以外にも錚々たる面々がいる。
「注目されるのはハタチ、まだ若いっていうところだと思うんですけど、自分はデビュー9年のほうを意識しますね。同年デビューは名前を出すのもおこがましいような凄い選手ばかり。自分はまだまだだなって。年齢はまあ、プロレスを始めた歳にもよるじゃないですか。でも“キャリアは嘘をつかない”っていう言葉があるので。じゃあ自分はキャリアに見合う実力があるのかなって」
AZMは「試合に年齢が追いついてない」と言われてきた。達者な試合ぶりなのにまだ10代。まだ若いのに凄い試合をする。アンバランスなところも個性ではあった。だがキャリアと実力のバランスを考えると、逆の意味で釣り合っていないと本人は考えている。それは“ハイスピードのスペシャリスト”というだけではない、それこそリーグ戦で優勝するようなトップレスラーを目指しているからでもある。
「同じユニットにいる(林下)詩美とか上谷(沙弥)が凄いですからね、デビュー3、4年なのに。同じキャリアの頃の私は全然でした。比べものにならない。
今もまだまだ。レスラーはあらゆる面で強くなきゃいけないし、華も必要だと思うんですよ。そう考えるとできないことが多いですね。グラウンド、レスリングも苦手だし」