令和の野球探訪BACK NUMBER
豪快すぎるフォームに巨人らが熱視線? 意見が分かれる最速159キロ右腕の指名はあるか「あの球速は天性。コントロールさえ直せれば」
posted2022/10/06 06:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
「今日こそは投げるのか?」
「なんだ、やっぱり投げないのか……」
そんな期待と不安を交錯させる右腕がいる。明星大学4年、谷井一郎だ。
大谷翔平、松井秀喜、イチローとMLBの歴史に名を残した偉大な日本人選手の名前が全て入っていることにもスケールの大きさを感じてしまうが、何より目につくのが豪快なフォームだ。
左足を高々と上げ、トルネード気味にテイクバックを大きく取り、目一杯腕をしならせて投げる。個性の塊のようなフォームで豪速球を次々とキャッチャーミットに叩き込んでいく。
MAXは159キロ。現在のアマチュア球界でもちろんトップの数値で、アマチュア時代の球速ということだけで言えば、大船渡高時代の佐々木朗希(ロッテ)が叩き出した163キロに次ぐのでないかと評されている。
「逸材」と呼ばれてもおかしくない存在だが、どうしてかここまで大きな脚光を浴びていない。ツチノコとまでは言わないが、首都大学野球2部リーグの舞台で「現れるかどうか」とヤキモキさせている理由はどこにあるのか。
「今の環境を抜け出したい」
はっきりと言ってしまえば要因は、コントロールの悪さだ。それでもロマンを抱かせるのは、他の誰でもない「谷井一郎にしかないもの」を持っているからである。そこには彼のルーツや置かれてきた環境が大きく関わっている。
2001年2月5日、東京都立川市で日本人の母とパラグアイ人の父との間に産まれた。豪快なフォームや力強い豪速球を投げ込めるのは父の身体能力を受け継いだと言ってもいいだろう。
しかし両親は中学時代に離婚。福生リトルシニア時代、原動力を尋ねる質問で「今の環境を抜け出したいという思いが強いです」と答えたように決して生活は裕福とは言えず、チームでも控えメンバーだった。こうした事情もあって谷井は、私立強豪校ではなく都立の武蔵村山高へ進学した。