「ボクシングとは違う競技になる」発言の意味

　榊原CEOも、メイウェザーの対戦相手となるRIZINファイターは朝倉未来しか考えられないという。前回の那須川と違い体重が近いということもあるし、YouTuberとしての知名度から日本において“世間”を巻き込むことができる存在だ。

　なおかつ彼は“不良”だった。10代はケンカに明け暮れ、ついには少年院に。そこから“不良たちの格闘技大会”である『THE OUTSIDER』で名を上げ、RIZINでも活躍。つまりボクシングエリート、生粋のアスリートであるメイウェザーも予想がつかない動きをする可能性があるのだ。実際、彼は「ボクシングとは違う競技になる」といった発言をしている。

　ボクシングとは軌道が違うMMAファイターのパンチで勝負、接近戦では少年時代に習った空手の突きも有効だろうと朝倉。その上で「最後は根性」とも。“うまさ”で競い合っても勝てないことは織り込み済みなのだ。朝倉は対戦相手を徹底的に研究し、そのクセを見抜いて完璧な作戦を立てることでも知られている。

朝倉の公開練習　©Norihiro Hashimoto

やはりナメてる？ 来日後のメイウェザーの行動は…

　朝倉はメイウェザーに一発食らわせてやろうと意気込む。だがメイウェザーはどこまでも余裕だ。ハワイで行われた記者会見では、メイウェザーの通訳としてRIZINファイターの平本蓮が登場。朝倉との因縁もある彼は「俺のパンチで朝倉未来の鼻はナスくらい膨れ上がる、とメイウェザーさんが言ってます」、「ジェット機とハエくらいパンチのスピードが違う、とメイウェザーさんが言ってます」と朝倉を煽った。

　本当にメイウェザーが言ったのか、平本が考えたものかは分からないが、これがウケた。「……とメイウェザーさんが言ってます」は、格闘技ファンの間で流行語にもなった。ただもちろん、こうした盛り上げ方を嫌うものも多い。正式な競技ではなく、対戦する選手のジャンルも違い、会見も“ショー”と化すエキシビション。まともに相手にしたくないという反応があって当然だ。

　メイウェザーの行動がまた読めない。那須川戦では、大会当日にホテルの窓から富士山を見て「今から行こう」と言い出してスタッフに止められた。会場入りは叙々苑で焼肉を食べ、銀座でショッピングをしてから。今回も試合1週間前、9月18日の夜にプライベートジェットで来日するといきなりパーティーへ。本人のインスタグラムを見ると、今回も“爆買い”に励んでいるようだ。さすがはMONEY、金の亡者というニックネームも持ち、成金趣味を隠さない男。インスタグラムでは、ショッピング中の動画にこんなテキストが添えられていた。

「ショッピングとキャッシュを数えるのは俺の毎日のルーティンだ」

　やはりナメているのか。朝倉の映像は見ていない、サウスポーということしか知らないとも語るメイウェザー。しかしナメているようにしか見えない態度で、那須川を倒してもいる。

9月21日、来日後の記者会見では余裕の笑顔　©RIZIN FF

公開練習で見せた“世界最高峰の一端”

　9月22日には、主催者のオファーに応え公開練習を実施。が、開始予定時刻になってもメイウェザーは現れない。「まだホテルを出ていないようです」とRIZINスタッフ。結局、1時間以上遅刻してジムに現れた。

　だがメイウェザーを待つ間、榊原CEOはこんな話をしていた。

「昨日は夜中の1時から練習してましたね。昼間は遊んでますけど（笑）」

　14時開始予定の公開練習の場に、メイウェザーは15時すぎに到着した。体にオイルを塗り、シューズをはいてハンドラップとグローブも。リングでのミット打ちからサンドバッグ。パワー重視のサンドバッグとスピードを活かすミットを交互に行う場面もあった。メイウェザー側のスタッフが「もっと下がって」とすし詰めの取材陣に指示を出す。

　ラウンドで区切らず、ほんの少しの小休止を挟んだだけのトレーニングで、メイウェザーの動きがどんどん上がっていく。スピードがあり、滑らかで、“機能美”という言葉も頭に浮かんだ。もちろん、試合直前だからあくまで軽めの調整でしかない。それでも十分「世界最高峰の一端を見た」という気にさせられた。

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