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「大谷翔平はリーグ屈指の投手」マリナーズ監督も脱帽…投球を丸裸にする“屈指のデータ分析陣”にも負けなかった“投手オオタニの奥深さ”
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2022/09/22 17:02
9月19日のマリナーズ戦にて、水原通訳と会話する大谷。ジャッジとのMVP争いも佳境に差し掛かっている
マメができていたのは右手中指の先端部分。速球系は指先で切る感覚で投げるため患部に直接負担がかかるが、スプリットは人差し指と中指で挟み、スライダーは指の腹の部分で押す感覚で投げる。患部に負担がかからないこの2つの球種は全投球(107球)の66%を占めた。
「球種の選択が一番(自分で)コントロールしていた部分かなと思う。ちょっとオフスピードが多かったですけど、そこが一番違うところかなと思います」
マリナーズ監督の脱帽「リーグ屈指の投手」
100マイル超えを連発するパワー投手でありながら、技巧派投手同様の引き出しの多さを持つ大谷ならではの投球。加えて彼の変化球はかわすでなく、攻める。マリナーズのスコット・サービス監督は脱帽した。
「大谷はリーグ屈指の投手。きょうはスライダーの形を変化させていた。100マイルの球を投げるが、それがなくても、スライダーの軌道、球速を変え、あらゆる変化球でアウトがとれる」
マリナーズは今季21年ぶりのポストシーズンへ向け躍進している。17年に経営体制が刷新されてから立て直しに少し時間はかかったが、今季を迎えるにあたり専門誌「ベースボール・アメリカ」が「今、最もマイナーが充実している球団」の第1位に選んだほどだ。戦力の充実に加え、分析担当部門への評価も高くなっていると聞く。
投球を「丸裸」にされても、大谷は抑え続けた
先のエンゼルス4連戦。ネット裏に用意されたマリナーズのブース席には、女性ひとりを含む分析担当者が6人も集結していた。筆者の座る記者席とはガラスで隔てられているだけ。彼らの仕事ぶりは丸見えだった。
4連戦での総試合時間は12時間8分。その間、彼らは全員がパソコンと睨めっこだった。目の前で行われている試合には目もくれず、ひたすらにトラックマン等から上がってくる数値を集計していた。あらためて分析担当者の仕事とは、数字の専門家であり、野球の本質を理解することとは別であることがよくわかった。
裏返せば、逐次上がるリポートで、大谷は縦横の変化量や回転数を丸裸にされていた。そして大谷は指に不安を抱えながらマリナーズを上回った。まさに恐れ入るとはこのこと。投手・大谷の奥深さを物語っている。