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地区大会優勝校は上位に行けない!?
一足早く第83回センバツ大会を分析。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/02/03 10:30
履正社のエース右腕、飯塚孝史はサイドスローから繰り出すキレのある直球と多彩な変化球を武器に、安定感抜群の投球を見せる
前年の地区大会はチームの潜在能力を見るための大会!?
次に考えられるのが、選抜優勝校が前年の地区大会優勝を無理して勝ちに行っていないこと。
'10年優勝校の興南は宮崎工との九州大会準決勝、エース・島袋洋奨を先発させず、背番号10の砂川大樹を起用し、3回までに3点取られて敗退している。
'08年優勝校の沖縄尚学は明豊との九州大会決勝で敗れているが、エースの東浜巨を先発させず、上原亘を先発させて7回まで投げさせている。
'06年優勝校の横浜は高崎商との関東大会準決勝、それまでの3人による継投を放棄し、川角謙を完投させて1対3で敗れている。
ともに本来の戦い方ではなく、負けてもいいから2番手投手の力量を見極めたい、あるいは背番号1を与えたエースの土壇場での底力を見極めたい、という監督の狙いが感じられる。この地区大会の戦い方を通して、チームの現状の力や可能性を把握して選抜大会に臨み、適切な選手起用や戦略を駆使して紫紺の優勝旗を勝ち取った――これこそ、地区大会敗退校が選抜大会で上位にくることの多い理由の1つだろう。
地区大会で投手の可能性を試した4校の強み。
今大会出場校のうち、地区大会で優勝できなかったものの優勝候補の一角に数えられるのは光星学院、横浜、履正社、九州学院の4校ではないか。
光星学院は秋田教良、川上竜平の2枚看板で東北大会に臨みながら、準決勝、決勝のマウンドを秋田1人にまかせ、決勝で涙を飲んだ。横浜は斎藤健汰、山内達也、柳裕也という素質溢れる3人の本格派を擁しながら、準決勝の浦和学院戦は1年・山内を7回に7点目を取られるまで投げさせ、敗退している。履正社は決勝までの3試合、飯塚孝史(写真)1人がマウンドを死守しながら、敗れた決勝の天理戦は渡辺真也、星田真之介を1、2番手で起用している。九州学院は大塚尚仁、岩橋昂樹のリリーフで難敵の興南を準々決勝で退けながら、準決勝の鹿児島実戦は1年・大塚を最後まで投げさせ、敗退している。ともに、力量を把握しきれていない投手の可能性を探るような起用法ではないか。
以上に挙げた4校と、地区大会優勝を勝ち取った浦和学院、日大三、大垣日大、天理、明徳義塾あたりが激しく優勝争いを演じるのではないかと、現時点では考えている。