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大谷翔平「今のウチはきつい」ホームラン後も笑顔はなく…番記者が見た“終戦”エンゼルスでの葛藤「プレーを楽しんでいるようには到底…」

posted2022/08/09 17:04

 
大谷翔平「今のウチはきつい」ホームラン後も笑顔はなく…番記者が見た“終戦”エンゼルスでの葛藤「プレーを楽しんでいるようには到底…」<Number Web> photograph by Getty Images

主力3人を放出し、事実上の“終戦”を迎えたエンゼルス。投打に孤軍奮闘する大谷翔平は、どんな思いでプレーを続けているのか

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阿部太郎

阿部太郎Taro Abe

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 8月2日、午後12時32分。

 エンゼルスの広報から1通のメールが届いた。 

「クラブハウスは3時15分に開きます」

 通常のナイター試合ならば、2時45分に開くが、この日は30分遅れでの開放。容易に予想はついた。

主力3人の放出で“終戦”を迎えたエンゼルス

 今夏のトレード期限が午後3時に迫り、エンゼルスは、ギリギリの交渉を続けていた。ジェットコースターの冒頭のように頂上から一気に転落したようなシーズンで、トレードの市場は無念の「売り手」に回った。

 駆け込みでブランドン・マーシュ、ノア・シンダーガード、ライセル・イグレシアスと、主力3人を放出した。イグレシアスはリリーフ陣とともに練習に顔を出したが、急きょ、切り上げてクラブハウスに戻った。

 3時15分。私服姿でリュックを背負ったマーシュ、続いてタンクトップ姿のシンダーガードがクラブハウスの前の通路で会見。そして、クラブハウスの中に入ると、トレードが成立したばかりのイグレシアスが段ボールに荷物をまとめていた。

 すぐにメディアに囲まれた守護神は、何とか言葉をつないだ。「ずっとここに残れればいいなと思っていたが……。驚いている。でも、これが野球。これが現実」。契約を4年延長した1年目。まさか、この夏にカリフォルニアを離れるとは思わなかっただろう。コーチやスタッフが、別れの挨拶をかわすために、入れ替わるようにイグレシアスのロッカーを訪ねた。

 仲のいい日本の記者が横でつぶやいた。「僕らだったら、今日転勤してくれと言われるようなもんですかね」。

 その言葉が妙に頭に残った。

「スライダーが6割」大谷の配球が意味するもの

 エンゼルスが主力を放出して事実上の白旗を上げた翌3日、トレード報道の主役だった大谷翔平が、マウンドに上がった。

 99球中、スライダーが61球。明らかに、4月や5月の大谷の考えとは違った。データを管理して、球種に偏りがないようにと常に語っていた男が、打者の手元で鋭く曲がる球ばかりに頼った。

【次ページ】 ホームランを放っても顔つきは厳しいまま

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