大橋ジムに籍を置いてからの3カ月間、今永は元3階級王者である八重樫東、優れたトレーナーに送られる「エディ・タウンゼント賞」を受賞した松本好二と2人のトレーナーから指導を受けている。特に八重樫とはほぼマンツーマンに近い形で、密な時間を過ごしてきた。

「リアルタイムで観ていた人だったので、最初は緊張しましたよ。八重樫さんのイメージは、毎試合顔を腫らしながら根性で戦い抜く人（笑）。でも、実際に接しみると緻密にボクシングを考えていて、すごく知識がある方でした。戦術や試合運び一つとっても、これまで感覚的に戦うことが多かった自分は、プロボクシングという競技の奥の深さを教えてもらった。プロとアマは生活も全然違い最初は戸惑いましたが、今ではこれだけ熱心に接してもらえる八重樫さんや、応援してくださる方の期待を裏切れない、という意識も芽生えました」

「世界への道」を認識できるようになった

　激戦のライト級で世界を目指す上で、技術だけではなく身体的な高い総合力が求められることは常に意識してきた。高校時代から体幹トレーニングに取り組んできたのも、パワーの重要性を理解していたからだ。ボクシングスタイルはアウトボクシングをベースに、インファイトもこなすオールラウンダーでもある。しかしプロ入り前の今永は「今のスタイルで本当に世界に届くのか」という疑問を常に感じていた。

　そんな迷いを断ち切ったのも、八重樫との出会いだった。

八重樫東トレーナー（左）との練習風景（写真・大橋ジム提供）

「練習量に関しては、結構やってきたという自負があったんです。でも、八重樫さんをみて思ったのは、『あ、全然足りてないな』ということでした。手を抜いていた感覚はなかったんですが、もしかしたら自分の中で少し逃げ道を用意していたのかもしれないな、と。強くなるには、とにかくやるしかないことが理解できた。

（八重樫は）現役を引退されて2年近く経つのに、とんでもない負荷のトレーニングを一緒にこなすんです。世界チャンピオンになるには、ここまで追い込んでやらないといけないのか、という自分の中での指標も出来た。どこかおぼろげで見えにくかった世界への道が、少しずつですが形を認識できるようになったのは大きいです」

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