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1番人気のGI連敗記録はワーストタイに…“根性娘”ソングラインを安田記念で初戴冠に導いた池添謙一の「絶妙な位置取り」とは?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPhotostud
posted2022/06/06 11:06
池添謙一の手綱に導かれ、安田記念を制したソングライン。海外遠征を経て心身ともに逞しく成長した
勝敗を分けた向正面でのポジション取り
勝敗を分けたポイントのひとつは、池添がコメントした4コーナー。
もうひとつのポイントは、向正面での位置取りだろう。池添はこう話した。
「まずはいいスタートを切ることに集中していました。あとはポジションをしっかり取ることを頭に入れて進んで行ったのですが、サリオスが斜め前にいて、引くか、引かないか考え、プレッシャーのないところということで、後ろにつけました」
このサリオスの直後というのは、4着になったセリフォスの藤岡佑介も取りたいと思ったポジションだった。
池添が先にそこを確保したことにより、セリフォスはやや後ろの外を通らざるを得なくなった。その結果、クリストフ・ルメールのシュネルマイスターは、セリフォスの内に封じ込められる形になった。道中、馬場の傷んだ内を回らされたマイナスに加え、直線でもすぐには進路を確保できないという、二重のマイナスにつながった。
ソングラインにとって、昨年の富士ステークス、今年2月にサウジアラビアで行われた1351ターフスプリントに次ぐ重賞3勝目が、念願のGI初勝利となった。
「サウジを経験して、心身ともに成長してくれているので、完成の域に達していると前回も思っていました」と池添。
かつて、ダート路線で活躍したヴァーミリアンは「ドバイに遠征して強くなった」と管理した石坂正元調教師が話していたし、3度海外に遠征した2019年の年度代表馬リスグラシューも「旅をして強くなった」と矢作芳人調教師が断じている。
リスクのある海外遠征を「ダメージ」ではなく大きな糧にできたという時点で、名馬への階段を一歩上っていたと言えよう。