猛牛のささやきBACK NUMBER
絶対に負けたらあかん…前キャプテンが明かす“大阪桐蔭の重圧”「正直、楽しめなかった」オリックス池田陵真が後輩たちに伝えたこと
posted2022/04/09 06:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
若返った、という表現を18歳に対して使うのはふさわしくないかもしれない。だが初めてのキャンプで野球に没頭するオリックスのルーキー・池田陵真の表情は、大阪桐蔭高校時代よりもどこかあどけなく、無垢な野球少年のようだった。
それでいて、放つ打球は高卒ルーキーとは思えない威力。紅白戦や練習試合が始まると高い対応力を見せ安打を重ねた。
その中で池田は考え方の転換を図っていた。
「プロ野球では全部が全部は打てないので、切り替えが大事になる。高校の時は、全打席打たないとダメって思っていました。西谷(浩一)先生から『森(友哉)は全打席ずっと打ってたぞ』と常に言われていたので(笑)。5打数4安打、4打数3安打でも、『その1打席、なんで打てなかったんや』、『森はもっと打ってたぞ』って。比べられるのが嬉しかったですし、それがレベルアップにつながっていました。
もちろんプロでも、全打席『絶対に打つ』と思って打席に立っていますけど、全部は打てないのが現実です。高校の時は、打てなかったら『あー』となっていたんですけど、プロでは10打席立って3本打てばいいバッターと言われるぐらいなので、そこは受け止めて、気持ちを切り替えて次は打つ、というのを大事にやるようにしています」
吉田正尚の打撃練習「すごく勉強になります」
そのプロの世界で2年連続首位打者を獲得した吉田正尚が、キャンプで同じBグループに合流すると、その打撃練習を食い入るように見つめた。
「見ているだけでもすごく勉強になります。ライブBPの時に、自分が打席に入っていたらピッチャーの球がすごく速く見えるんですけど、吉田正尚さんが打席に立っていると、球が遅く見えるんです。バッターの間合いで打てているからだと思う。そういうタイミングの取り方とかを参考にできればと思って見ています」
大きな瞳をキラキラさせながら、声を弾ませる。大阪桐蔭の主将を務めていた昨年は、常にキリリと締まった表情で、自分にも周囲にも厳しい隙のないキャプテンだった。だがキャンプ中の池田は、野球が楽しくて仕方がないという様子で、初々しい笑顔を振りまいていた。
今、楽しそうに野球してますね、と伝えると、「そうですね。今まで硬く考えていた部分が、少し楽に考えられているので」とうなずいた。
高校野球は楽しかったですか、と聞くと、「いやー、正直、楽しめなかったですね」と答えた。