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端正な「西の将棋王子」は料理好き+扇子の柄に注目? 実力派・斎藤慎太郎八段(28)の素顔〈渡辺明名人に2期連続挑戦〉
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2022/04/09 17:02
第80期名人戦第1局に臨んだ渡辺明名人(左)と斎藤慎太郎八段
1993年4月、奈良県で生まれた。名前の主な由来は、母親が作家・石原慎太郎の愛読者だからという。2004年に畠山鎮八段の門下で関西奨励会に6級で入会。2008年に三段に昇段。2012年に8期目の三段リーグで1位に入り、四段に昇段して18歳で棋士になった。そして2020年に8期目の順位戦でA級に昇級した。
180センチの長身に端正な容貌。柔らかな関西弁を話すことから「西の将棋王子」という愛称があり、女性ファンの人気が高い。姓名を縮めて「さいたろう」とも呼ばれている。
父親は大阪で「カレーハウスCoCo壱番屋」を経営していて、斎藤は幼少時に店を遊び場にした。もちろんカレーは好物だ。料理が好きで、グルメ漫画『美味しんぼ』を愛読している。最近はトマトを使った料理をよく作るという。
京都のある老舗店のいろいろな絵柄が入った扇子を対局で用いている。蛙の絵柄は「勝ちを持って《かえる》」、龍の絵柄は「闘志をむき出しにして戦う」など、その時々の心境で使い分けている。
椿山荘で行われた第1局では中盤、局面が大きく動いた
今年の第80期名人戦七番勝負第1局は、4月6日、7日に東京・文京区「ホテル椿山荘東京」で行われた。名人戦が毎日新聞社と朝日新聞社の共催になって以来、2008年から開幕局の対局場として恒例になっている。
この対局場の一帯は、南北朝時代の頃から椿が自生する景勝地で「つばきやま」と呼ばれていた。明治の元勲の山県有朋は、西南戦争の功によって与えられた年金を基にして土地を購入し、自分の屋敷を「椿山(ちんざん)荘」と命名した。その後、藤田観光の所有地となり、現在に至っている。広大な庭園を擁して、景観がとても美しい。
名人戦第1局では「振り駒」が行われた。5枚の歩の駒のうち、表の「歩」が3枚となり、渡辺の先手番と決まった。先手番の利点は、作戦を主導しやすいことにある。
戦型は「相掛かり」か「角換わり」が予想されたが、渡辺は若手棋士時代に得意にした「矢倉」を選択した。序盤では、藤井聡太三冠ー羽生善治九段戦(昨年11月・王将戦)と同一の進行となったが、41手目でその前例と分かれた。
中盤で局面が大きく動いた。斎藤が6四の角筋を生かして△4五歩と突き、1筋の香を取りにいった。渡辺はその香を取らせる代わりに、相手の玉頭に飛角銀桂で集中攻撃をかけたのだ。
斎藤は懸命に防戦したが、左側(1筋~3筋)の金銀桂桂香の駒が機能不全となり、「片翼飛行」のような戦いを余儀なくされた。