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打者・大谷翔平を抑える方法は? 日米通算170勝・岩隈久志が分析「とんでもないボール球でもホームランにするじゃないですか…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2022/03/27 11:02
大谷翔平の「レフト方向の飛距離」を高く評価した岩隈久志。菊池雄星との対戦を例に出しながら、その凄さを語った
彼の凄さはまずスイングスピード。しかもレフト方向にあれだけの飛距離を持っている点も特別です。対戦するピッチャーは怖いですよ。
引っ張り専門だったら、少しは穴が出てくるので楽なんです。でもあのパワーでレフトとか左中間に飛ばされたらお手上げになります。正直言って僕が対戦したら、あまり勝負したくない。それくらいの感覚で投げるしかないレベルのバッターだと思います。
(菊池)雄星も最初の対戦ではカットボールをセンター左に打たれました。真ん中高めでしたけど、ちゃんと構えているところにはいっていた。それを打たれちゃった。あの高めの球をセンターから逆方向にあれだけ飛ばす。観ていて打球へのスピンのかけ方とかが凄いのかもしれないなと思いました。
でも雄星も2度目の対戦のときには、スライダーを軸に三振もとって抑えましたよね。シアトルではシーズンの後半はとにかく変化球攻めが多かったです。徹底していましたし、雄星もそういうデータを元に考えて投げた結果だったと思います。
大谷翔平と対戦するなら何を投げる?
もし僕が投げるとしても、やっぱり変化球を軸に打たせることを考えるでしょうね。
初対戦だったら探る意味もあって初球は外に真っ直ぐをいくかもしれませんが、対戦がいろいろある中だったら、やっぱり外からのスライダーで入って……。で、内角にいく。内角へはカット気味に入れてファウルを打たせたい。その球を振ってくれたらオッケーですし、この辺を狙ってきているんだなってことを意識づけさせられればいいです。
ファウルでカウントを取れれば、今度は外が広くなるので、そこに落としたい。大谷くんといえども追い込まれたら、やっぱり自分のスイングをするのは難しい。だから最後はやっぱりフォークで、となる。そういう攻め方をするでしょうね。
基本的にNGなのは外角の甘めとか、真ん中から外の甘めの球でしょう。一番、長打になってしまう。そこは絶対に避けたい。対戦の中で投げていいとすれば1球だけで、使うとしたら初球の入り球ぐらいでしょう。それでファウルを取れればいいし、見送ってくれてカウントを稼げたらいいくらいの感覚。あとはその辺には絶対投げない。
追い込んでから裏をかいてインサイドに真っ直ぐというパターンもありますけど、それもいらないと思います。ちょっとでもコントロールを間違えると怖い。それならとことん落として振らせるとか、逆に高めの真っ直ぐに戻るとか。基本的にはそういう考えで投げると思います。