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巨人の育成契約を断った山下航汰は社会人野球へ…プロ野球「支配下70人枠」は必要か?「不公平論」vs原監督「枠なんていらない」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2022/01/07 17:05
2019年には育成から支配下契約となり、背番号「99」をつけていた山下航汰。今季から社会人野球でプレーする
山下が巨人退団を決断しなければならなかった理由
山下がなぜ巨人退団という決断をしたのか……いや、しなければならなかったのか? その背景に厳然とあるのが、NPBが支配下選手の登録数を70人と定めている現行のルールなのである。
野球協約79条では選手の制限数について「球団は、同一年度中、70名を超える選手を支配下選手とすることはできない」と定めている。これが世に言う「支配下70人枠」で、その是非についてはNPBの中でも、これまでも様々な論議がなされてきた懸案事項の1つでもあるのだ。
その論議の中で常に枠撤廃に反対する人々が唱えるのが、不思議な「不公平論」である。
選手枠を広げると資金力のあるチームは選手を大勢、抱えることができる。しかし資金力に乏しい球団は、そう多くは選手を抱えることができないので不公平が生まれる。
簡単にいえばそういう論理だ。
選手枠を撤廃しても、グラウンドでは公平
ただ、ここで語られる不公平とは実際のグラウンド上の問題ではない。
例えば選手を100人抱えるチームと70人しか契約選手のいないチームでも、実際に一軍登録できる人数は29人でベンチ入りできる人数は25人で変わりはない。もちろん試合に出場できる選手の数はセ・リーグが9人で指名打者制度のパ・リーグは10人。抱えている選手の数と、勝負の場所での選手の数には相関関係はないのは当たり前の話である。
これが例えば選手を多く抱えれば、一軍登録の人数が増えたり、試合に出場できる選手の人数が増えるのであれば(あり得ないことだが)不公平と言えるのかもしれない。
しかし選手枠を撤廃したとしても、あくまでグラウンドでは公平なはずなのである。
ただ、選手を多く抱えることで、当然、様々な才能を発掘できるチャンスが広がり、チーム内の競争を激しくする効果も生まれる。結果としてチームが強くなる。
一昨年までのソフトバンクの絶対的な強さの背景には育成制度を利用した三軍制があるというのは、もはや言うまでもない1つの日本球界の結論だ。そこでそうしたソフトバンクのチーム編成を見習って、育成制度を利用した三軍制度やチーム強化を図るチームが多くなってきているのもまた事実である。