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栗林良吏「準備上手は仕事上手」激戦の新人王獲得を後押ししたカープ守護神の類まれなる“準備力”とは
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PHOTO
posted2021/12/20 17:03
21年1月9日の新人合同自主トレで淡々とキャッチボールする栗林。思えばこのとき、今季の成功は約束されていたのかもしれない
合宿中には、栗林と同じようにプロ1年目から抑えを務めた山崎康晃と話す機会があり、抑えの立場を再認識した。
「9回のピッチャーにしか味わえないやりがいもある。リーグ優勝、日本一、最後真ん中にいるのは抑えなので」
覚悟が決まったのかもしれない。栗林は侍ジャパンでも抑えを任され、金メダル獲得に大きく貢献。胴上げ投手として、歓喜の輪の中心にいた。
2年連続新人王輩出はチーム浮上のきっかけとなるか
広島としてみれば、昨年の森下暢仁に続いて栗林が2年連続で新人王を獲得したにもかかわらず、チームは3年連続Bクラスに終わった。
新人王の輩出がチーム成績に直結するわけではない。過去に広島の11選手が新人王を獲得してきたが、新人王獲得年にチームが優勝したのは2度。5度はBクラスに終わっている。
ただ、新人王を獲得した選手はみな、チームの柱となっていった。そして連続して新人王が誕生する期間には、チーム力が上がる傾向にある。古くは84年小早川毅彦、85年川端順、86年長冨浩志が連続で新人王を獲得した3年間は優勝2回と2位1回で、91年の優勝は彼らが中心選手となった(82年も津田恒美が受賞)。
同じことは12年の野村祐輔、14年の大瀬良大地にもいえ、25年ぶりに優勝した16年シーズンでは、野村が先発で、大瀬良が中継ぎとして大車輪の活躍を見せた。そういった意味でも、森下、栗林の連続受賞は今後のチームづくりにおいても追い風といえる。
20年の新人王森下は、いまや先発ローテーションの柱の1人となり、栗林も佐々岡真司監督1年目に固定できなかった抑えとして絶対的な存在となった。
「セーブ数にこだわらず、セーブシチュエーションでしっかりと今シーズン同様、勝ちのまま終われるようにしたいです。年齢が近い選手が多かったので、そういう選手たちに負けないように。練習を含め試合も信頼されるようにやりたいなと思います」
守護神は今後も抑えとして投げ抜く覚悟を決めている。