フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
元全米チャンピオン長洲未来が語る“日本語コンプレックス”…それでも「日系アメリカ人であることは、誇りに思っているんです」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/12/09 17:02
12月6日、マンハッタン・ブライアントパークのクリスマスツリー点灯式にて演技を行った長洲未来
だがその一方で、懸念もある。
「現在の女子が跳んでいるジャンプは、かつてなかったレベルの難易度。これが長期的に体にどのような影響を与えるのか、誰も知らないわけです。だから特に若い世代の怪我のことは、心配しています」
彼女自身、14歳で全米タイトルを手にしてから、足首、膝、そして股関節と多くの負傷に悩まされてきた。特に3アクセルの練習を本格的に始めてからは、股関節の靭帯を痛めて手術も受けている。今シーズンは紀平梨花、アレクサンドラ・トゥルソワなどの優れたジャンパーたちが、負傷のために大会を欠場しているのが現実だ。
「改善されないといけない」ジャッジの評価への疑問
シニアに上がる年齢をあげるべきだという意見もこれまで何度も出てきているが、それについてはどう考えるのだろう。
「それはとても大事な問題。でも答えるのは簡単ではありません」
彼女自身、14歳で全米チャンピオンになった時、年齢制限のためにISUのシニア国際大会に出ることが許されなかったという体験があった。だが28歳になった現在の彼女が心を惹かれるのは、大人の表現力だという。
「氷の上で物語を表現できる、大人の滑りが見たいなと思うんです。若い子は人生経験もないので技術を見せることに集中してしまう。それは仕方のないことです。でも問題なのは、そういった違いが本来は演技構成点に反映されるべきなのに、ジャッジは必ずしもそうしていないことです」
彼女が指摘するように、まだ円熟していない深みのない演技でも、安定して難しいジャンプを決めていくうちに、ジャッジたちは演技構成点まで気前よく上げていく傾向がある。だが本来は、技術点と演技構成点とわざわざ二部門に分けている理由は、それぞれを別個に評価するためだったはずだ。
「ジェイソン・ブラウンや、カロリナ・コストナーの表現力は、他の選手とは全く別次元です。サトコ(宮原)もそうですね。でもそれがきちんと数値になって評価されていない。ここが改善されないといけないと、私は思います」