投げ込まれるメガフォン、殺気立つ星稜＆明徳スタンド、異例の試合中断⋯5連続敬遠後、目を閉じた松井秀喜が“神様にお願いしたこと”

　物を投げ込んだのはレフトスタンドの観客だけではない。一塁を守っていた岡村の前にも凍った缶ビールが飛んできた。

「五〇〇ミリリットルのやつですよ。ベースの前あたりに。さすがにビビりましたね。でも、あのシーンは最高でしたね。けっこう興奮してましたよ」

　現場にいちばん近いところ、レフトの守備についていた加用にはさすがにそんな余裕はなかった。

「第五打席、一球ボールになった時点で、『うぉーっ』てなってたんです。『そこの（背番号）11番、殺すぞぉー！』とか。やばいと思いましたよ。それからはもう、ザワザワ、ザワザワ、すごいんです。なんかあるなと思ってチラチラ見てたら、ぽーん、ぽーんって何人かがメガフォンを投げ込んできた。そうしたら一気にぶわーってきたんです。ジュースの紙パックとか、オロナミンCの空き瓶とかもあったかな。怖くてラインの方には、よういかんかったですよ。ただ、アルプススタンドの脇で、次の試合だった天理の応援団が待機してたんですけど、その人たちが『気にすんなよー』って励ましてくれたんです」

9回、5打席連続の敬遠四球を受ける星稜・松井秀喜 ©Sankei Shimbun

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試合中断中、星稜の選手が「ごめんな、って言ってきてくれて」

　しばらくすると、三塁側ベンチから星稜のメンバーが駆けてきた。加用は続ける。

「星稜の選手がきて、メガフォンとかをひろいだしたんで、僕も、ひろいました。そうしたらキャッチャーの人が……名前、忘れたんですけど、ごめんな、って言ってきてくれて。ホッとしましたね。怒ってるんじゃないかなって思ってましたから。でも結局、僕は三つ、四つしかひろってません。審判の人に君は向こうに行ってなさい、って言われたんで」

　加用は事態が収拾するまでセンターの位置で待機していた。加用が言う「キャッチャーの人」もそのときのことを覚えていた。北村が思い起こす。

「自分、けっこう、しゃべってましたもん。彼、『監督の指示なんで、すいません』とか言ってたんですよ」

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