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「殺すぞ、死ね、が当たり前になっている」中日・福敬登が“入団時”から受け続けた中傷《被害届受理、投稿者の特定へ》
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2021/12/03 11:04
自身のSNSに「おびただしい数のDMが来たこともあります」と打ち明けた中日・福敬登。被害届を提出したことを発表した
スタジアムの帰りに仲間内で居酒屋に寄り、ひいきのチームが負けたやけ酒をあおる。酔いに任せて「あんなやつ死んじまえ」という声は、その場で酒臭い息とともに消えてしまう。しかし、DMはもちろん、SNS上のコメントはなかなか消えない。だから、どうか節度を持ってくれ。至極当たり前のことを訴えているに過ぎないのだが、それがあまりにも守られていない現状に、闘うことを決意したのだ。
「僕が行動を起こすことで、少しでも抑止力になれば」
といっても素顔の福は、こうした心ないコメントに「かかってこいや!」と立ち向かえるような鋼のメンタルの持ち主ではない。「そういう人たちのように、受け流したり、受け止めたりできればいいんですが、僕はそんなに強くない。でも泣き寝入りもしたくなかった」と打ち明けた。葛藤の末、法的手段に訴えたのだ。
「こうすることで、さらに(ネット上で)言われるという覚悟はあります。でも、言葉には責任が伴うんじゃないでしょうか。人は不幸に群がるものだなと感じますし、性善説では生きていけないことも承知しています。でもクリーンにはならないにしても、クリーンにする努力はしたい。変わるにしろ、変わらなかったにしろ、賛同者もいる。僕が行動を起こすことで、少しでも抑止力になればと思っているんです」
刑事にしろ、民事にしろ、ものすごい労力が必要になる。そのプロセスでさらに嫌な思いをすることもある。しかし、放置は何も生み出さないと、勇気を振り絞った。
そもそも、福が初めて中傷にさらされたのは、プロでまだ1球も投げていない入団時までさかのぼる。中日球団から提示された背番号は34。それが、野球殿堂入りが確実視される山本昌広(山本昌)さんの背番号だとは知っていたが「お断りします」などと言えるはずがなかった。