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甲子園準V→ヤクルトで進化 奥川恭伸「20歳にして12球団No.1」の才能って?《山本由伸との“マダックス対決”なるか》 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/11/20 06:01

甲子園準V→ヤクルトで進化 奥川恭伸「20歳にして12球団No.1」の才能って?《山本由伸との“マダックス対決”なるか》<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

セCSファイナル第1戦で「マダックス」を達成し、笑顔の奥川恭伸

 12球団の先発投手の中で2年目、20歳の奥川が1位なのだ。以前にも触れたが奥川は2019年夏の甲子園に星稜高校のエースとして出場、準優勝したときには5試合41.1回を512球で投げた。P/IPは12.39という驚異的なものだったが、プロに行ってからもその才能はいかんなく発揮されている。

「1イニング15球」は、プロ野球の投手コーチがよく口にする「投球の目安」だが、それをクリアしているのはわずか3人だけ。いかに難しいかが分かる。

 なお100イニング以上投げた投手で、P/IPが最も多いのは、西武の今井達也で17.65(2794球/158.1回)だった。仮に100球を投げるとすれば、奥川は7回弱(6.9回)投げることができるが、今井は5.2回しか投げることができず、この差は大きい。

100回以上投げた投手では12球団最少の10与四球

 今季、奥川の先発マウンドを3回観戦しているが、立ち上がりは必ずしも良くないことが多かった。四球はあまり出さないが被安打が散見された。しかし打者が一巡する頃から調子が上がり始め、快調なペースになる。力の配分ができているのだろう。

 それに加えて100イニング以上投げた投手では12球団最少の10与四球。抜群の制球力が、安定感のある投球につながっているのだ。

「マダックス」を達成するためにはP/IPを少なくすることが必須だが、そのために重要なのは与四球を少なくすることだ。つまり無駄球を減らし打者に早打ちさせる必要がある。奥川はその能力が高いのだ。

奪三振が多すぎるとマダックス達成は難しい?

 もう1つ重要なポイントは「奪三振が多すぎる投手は、マダックス達成が難しい」ということだ。

 2002年以降の「マダックス」のうち、2けた奪三振は2006年5月9日、ソフトバンクの新垣渚が広島との交流戦で、94球で完封した際に12奪三振(0与四球)した例があるだけだ。

 27個のアウトをすべて3球三振で切って取ったとしても81球かかる。奪三振が多いパワーピッチャーは「マダックス」とは相性がよくないと言える。

 ただ奥川はCSでの「マダックス」の際には9奪三振を奪っている。三振を奪いながらも効率的な投球ができているのだ。これも大したものだと思う。

 先発投手の能力を測る指標としては、完投数、完封数、奪三振数、被安打数、与四球数、K/BB(奪三振数÷与四球数)など様々なものがあるが、先発として長くチームに貢献することを考えればP/IPと「マダックス」は最重要な指標の1つではないかと思う。

 バッタバッタと三振を奪ったり、スタミナ抜群で多い球数を要しても完投するような投手は、頼もしい存在ではあるが、ややもすれば非効率で、故障のリスクもある。一方で効率的な投球で投げることができる投手は、故障のリスクが少なく、長らくエースとして活躍する可能性が高い。

【次ページ】 奥川vs山本由伸なら絶対に見逃せない投手戦になるはず

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