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「150キロの腕の振りで、100キロのシンカーを投げられないか?」野村克也の“無茶振り”が高津臣吾を守護神へと変貌させた
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2021/11/16 17:03
西武・潮崎哲也のシンカーに着想を得た野村克也は、高津臣吾に習得を指示。緩急自在のシンカーはやがて高津の代名詞となった
プロ入り以来、順調な成長曲線を描いていた古田敦也は、執拗な内角攻めによって、初めてプロの壁にぶち当たった。それでも、プロ四年目を迎えていた古田は着実に成長していた。勝負どころの8月には月間MVPを獲得するなど、攻守の要として活躍をした。
さらに、来日二年目となるジャック・ハウエルは日本記録となる5本のサヨナラホームランを放ち、チームを勢いづけた。そのハウエルに刺激されるように、この年から加入したレックス・ハドラーも八番打者として、勝負強いバッティングを披露した。
ヤクルトの誇る超強力攻撃陣は盤石だった。
セ・リーグ優勝は通過点、目標は「打倒西武」のみ
5月23日に単独首位に立ったヤクルトは、6月13日の北海道シリーズで横浜ベイスターズを撃破して貯金を六とした。
その後は伊藤、さらに岡林の相次ぐ離脱もありチームは失速する。二位の中日ドラゴンズの追い上げもあり苦戦したが、川崎が復調し、さらには伏兵・山田勉の力投もあって、前年王者の意地を見せてかろうじて首位をキープしていた。
しかし、8月31日からのナゴヤ球場での首位決戦に連敗。翌9月1日には101日ぶりに首位から陥落する。その後、3日の読売ジャイアンツ戦に快勝して、首位を奪回したものの、一進一退の攻防は続いた。
24日からの中日との三連戦では一勝二敗と負け越して窮地に立たされた。それでも、野村が「死棋腹中に勝着あり」と語ったように、窮地に立ったときでも勝機はある。28日の広島戦から怒濤の十一連勝を飾り、西武から遅れること二日、10月15日の対広島戦でリーグ連覇を成し遂げた。
開幕前に抱いていたみんなの思いは通じた。
今度こそ西武を倒す─。
前年は無欲の勝利だった。しかし、今年は違う。キャンプイン時点から「打倒西武」を掲げ、セ・リーグ優勝は当たり前。さらに、その先を見据えた戦いを続けた。
野村克也率いるヤクルトナインが、満を持して再び西武に挑む。<後編へ続く>
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