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今年の捕手候補は正直人数不足だが…プロ野球スカウト「松川虎生はサードでも良い逸材」2021年ドラフト目玉候補《捕手ベスト3》は?
posted2021/10/03 11:06
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
捕手が人材豊富なんて年は聞いたことがないが、人数でいったら、今年は本当に少ない。
9月下旬になるまでに志望届を出した中では、高校生で3、4人、大学生でやはり3、4人が指名される程度……社会人に至っては、昨年に続いて、捕手の指名ゼロ。そういうこともあり得ると見ている。
しかし、量的には心細くても「質」でいえば、数年後、チームのレギュラーマスクを担う捕手を3人ほど輩出した年……なんてことにもなりそうな、優秀な素質を持った捕手が点在していることも、間違いないのではないか。
捕手編(1)市立和歌山高・松川虎生(178cm98kg・右投右打)
中でもイチオシには、松川虎生捕手(市立和歌山高・178cm98kg・右投右打)を挙げたい。
私は、この捕手は今年の高校生バットマンとしてもNo.1の実力者だと見ている。それでいて、「捕手」としても、実によい香りを発する所作とそのプレーに惚れ込んでいる。
球場で背中側から見ても、テレビ映像で正面から見ても、彼がミットを構えている姿が、私には、そのまんま「ミット」に見える。
そういう捕手はなかなかいない。丸っこく見える体型のせいだけじゃない。「さあ、ここへ投げてこい!」投手を引っ張るそういう思いが、構えた姿を丸くさせる。
決してデーンと腰を据えているだけじゃない。高校トップクラスの剛腕・小園健太の150km超えの速球はもちろん、140km前後にもなるカットボールやスプリット……強烈な速い変化もしっかりミットを止めて捕球できるキャッチング。横に逸れたショートバウンドの変化球への敏捷な対応も含めて、十分に出来ている。
ひっかけてしまったようなボール球を、ミットを流して捕球することがあり、そのことをあれこれ言う人もいるが、意識があれば直せるディテールである。私にはボール球の軌道を球審の記憶の中に残したくなくて、わざと「捕球点」を作らずにサッとミットを流して捕っているように見えるのだが、果たしてどうか……。
捕球した高さで、と言いたくなるほどの低い体勢で、腰を割って投げられるスローイングは球道の安定感抜群。投げやすいゾーンだと、二塁送球1.9秒をきって、ベース上ピシャリストライク!もたびたび再現している。