「各鉄道会社は遊園地が沿線にあるところが多いですよね。阪神電鉄にも『阪神パーク』という動物園と遊具が併設されたレジャーランドがありました。その園地管理をする部門が阪神電鉄の中にあったのですが、それが分離して『阪神園芸』という組織になったのがスタートなんです。

六甲山アスレチックパークGREENIA 水上アスレチック建設　©Hanshin Engei

　そして、当時から甲子園球場の整備を担当するスタッフはいたのですが……弊社が整備を担当するようになったのは、弊社ができてから5年くらいを経てからでした。ですから、甲子園球場のために阪神園芸という会社が元々あったというわけではないんです」

野球中継が増えたことで“露出”が増えた

　事業内容の説明を受けながら冊子に目を通してみる。高級ホテルやオフィスビル内の整った庭園、集合住宅内のベンチに鮮やかに咲くアジサイ、大規模ショッピングセンターの色鮮やかな花壇や西梅田地下通路内にあふれる植物と木々……。なお関西だけでなく東京などにも事業例がある。自分の不勉強を恥じ入るばかりである。

緑化装飾部の携わった空間　©Hanshin Engei

「ただ、弊社の名前が知られるようになったことについて、もちろん野球中継の存在は非常に大きかったのだと感じています」

　見るからに紳士的な久保田社長は、すかさずこちらをフォローしつつ、知名度が上がった理由を2つ挙げてくれた。

「これは私個人としての考えですが……BS放送の普及によって、プロ野球の中継が増えましたよね。特にNHKさんの場合はコマーシャルが入りません。そうなると、中断中もずっとテレビが甲子園球場のグラウンドを映すことになります。そして雨が上がってくると、弊社の職員が出てきて整備を始める。その一連の流れをご覧になっていただいたのは、知っていただく1つのきっかけだったのではないでしょうか。

　甲子園のテレビ中継などでも実況と解説の方が『あ、阪神園芸が出てきましたね』、『そろそろ試合が再開されるかもしれませんね』とおっしゃっていただくことで認知された。そして、プロ野球選手の引退の挨拶も非常に大きかったと思います。『阪神園芸さんにお世話になりました』とおっしゃってくれるタイガースの選手が数多いですからね」

【次ページ】　「和田豊さんが引退試合の時に感謝を」