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ハッキリ言って“弱い”けど…東大卒・弁護士レスラー剛馬(39)が語る〈敗北の極意〉「プロレスと裁判に共通するのは…」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2021/08/18 11:01

ハッキリ言って“弱い”けど…東大卒・弁護士レスラー剛馬(39)が語る〈敗北の極意〉「プロレスと裁判に共通するのは…」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

弁護士法人Nextでさまざまなトラブルに向き合いながら、プロレスラーとしても活動している川邉賢一郎(リングネームは剛馬)

 でも楽しいか楽しくないかで言ったら、弁護士の仕事だって楽しいんですよと剛馬。二日酔いや痛風で体調が悪い時もあるが、仕事が嫌だと思ったことはないそうだ。

離婚・相続・詐欺被害…「町弁」としての思い

 弁護士・川邉賢一郎はいわゆる「町弁」、町の弁護士である。

「病院でいえば町のクリニック。専門的なことになると大きな病院に行ってもらうかもしれませんが、まずはなんでも診ますから困ったら来てくださいと。

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 仕事の半分近くは離婚・相続といった家庭の問題。詐欺被害に関する相談も多いです。今の時代は仮想通貨やネットオークション、情報商材関連の詐欺が増えているので」

 仕事上、どうしても人間のネガティブな面と向き合うことになる。

「ここ(事務所)に相談に来られる方は、ほとんど全員が“こんな酷い話、聞いたことありますか?”と言うんです。確かに似たような話はあっても、同じ話っていうのはないんですよ。それぞれに傷を負っていて、どっちがより重いということはない。でも弁護士としては、共感や同情に引きずられてはいけない。どこかで無責任にならないとできない仕事なのかなと。仮に僕の家族が犯罪被害に遭ったとしたら、他の弁護士さんに任せます。やっぱり冷静ではいられないし、冷静じゃないとうまくいかないので」

プロレスラーと弁護士に共通すること

 プロレスラーとしての経験が役に立つこともある。誰に脅されようが凄まれようが、リング上の対戦相手ほどには怖くないそうだ。

「怖いのは怖いですけど、あぁ怖がらせようとしてるなぁ……くらいの感覚ですよね。で、力で相手を屈服させようとする人って、毅然とした態度でいると意外とすぐ諦めたりもするんですよ」

 プロレスと弁護士の仕事で共通するのは“いい負け方”があるということだ。確かにプロレスでは、大善戦して勝者以上に喝采を浴びる敗者もいる。では法律の世界での“よき敗者”とはなんだろう。

「国選弁護人として刑事事件を担当した時など、これは有罪は動かないということもあるんです。ただ執行猶予にできる場合もあるし、懲役3年の実刑でも、身内の方から“3年後まで待っています”という証言を得られたことで、被告人が心穏やかに服役できる可能性が出てくる。あるいは、どうしても1000万円の賠償が必要なんだけど、それを100万円の10回払いに交渉して、そのことで会社が倒産しなくで済んだとか。裁判も勝つか負けるかだけじゃないんです。でも、いい負け方ができても、それが自分の力だと思っちゃいけない。慢心につながりますからね。頑張ってもうまくいくとは限らないのがこの世界。でも手を抜いたら絶対にうまくいかない。それもプロレスと同じですかね」

【次ページ】 「泥水すすっても生き残れる人間でありたい」

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