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[連覇の先に続く道]大野将平「求道者が受け取ったメッセージ」
posted2021/08/13 07:00
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
柔道界やファンの期待を浴びる中での堂々たる金メダル獲得。しかし、そこにはライバル不在だからこその苦悩があった。混合団体戦の敗戦という試練を経て、自身が考える今後とは。
試合直後の荒々しさを保っていた表情がたちまちワッと崩れた。
「リオデジャネイロオリンピックを終えてからの、苦しくて、辛い日々を、凝縮したような、そんな1日の戦いでした」
息を弾ませ答えたテレビインタビューの直後、井上康生監督の姿を見つけた途端に大野将平の瞳から涙が溢れ、二人は抱き合って肩を震わせた。
大野が子どもの頃初めて見た五輪が、井上が金メダルを獲った2000年シドニー。その後、井上体制の発足初年度となった'13年の世界選手権で代表に選ばれた。この時から今も代表に名を連ねているのは60kg級の髙藤直寿と73kg級の大野だけ。なかでも大野は“パウンド・フォー・パウンド”とも称えられる抜きんでた強さと、しっかり組んで投げる日本的柔道の体現者として、特に'16年リオ五輪以降は日本代表の象徴的存在となっていた。
頂点を極めた者の孤独、そして五輪連覇に挑む重圧。自らも現役時代に連覇に挑んだ井上は、葛藤する大野を間近で見守り続けてきた。「最強かつ最高の柔道家、井上ジャパンでは大野将平、お前だ。世界中が称賛する柔道スタイル、姿勢、佇まいを見せてくれ」と言って送り出した側と送り出された側。二人の男に涙を流させたのは深い共感だった。