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斎藤佑樹が語る“ハンカチ王子前夜”「あんな経験をしたことはなかった。本当にショックでした」神宮で泣いた日 

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byTakashi Shimizu

posted2021/08/21 11:03

斎藤佑樹が語る“ハンカチ王子前夜”「あんな経験をしたことはなかった。本当にショックでした」神宮で泣いた日<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

15年前の夏、100年に1度の伝説の名勝負を制した斎藤佑樹。当時を振り返った貴重なインタビューである

「僕は日野台戦と同じピッチングをしたんです。でも三高には打たれました。いいピッチングをして手を尽くし切ったのに、やられた。僕の得意な球をちゃんと投げたのに、それを打たれて負けたんですから、本当に力がないんだなと思いましたね。まっすぐの威力も変化球のキレも、コントロールも……ホームランを2本打たれたんですけど、そのうちの1本は高めのボール球をスタンドまで持っていかれたんです。そんなに球に力がなかったのかと……全部を振り切られている感じで、あんな経験をしたことはなかった。本当にショックでした」

 斎藤は5回を投げ切ることができなかった。2本のホームランを含む11本のヒットを打たれて、1-8でコールド負け。まさかの大敗に2年生エースは神宮で泣いた。学校に戻ってからもしばらく一人でグラウンドに佇んでいた。そのときのことを神田と及川はこう記憶している。

「斎藤は2年で早実の1番を背負うことになって、自分は高校野球で通用するピッチャーだと思ったんじゃないかな。でも、そんな斎藤も歯が立たなかった相手が日大三で、今のままじゃダメだと意識を変えてくれたのがあの試合だったと思います」(神田)

「試合後の引退式で、3年生の高屋敷さんが『斎藤、俺は抑えたぞ、お前に1番をやったのに不甲斐ないじゃないか』と叱咤激励したんです。その言葉に斎藤がグッときていたのを覚えています」(及川)

「日本一への距離は果てしなく遠く感じてましたね」

 斎藤を粉砕した日大三は3年連続で夏の甲子園に出場、ベスト8まで勝ち進んだ。その大会で甲子園連覇を果たしたのが駒大苫小牧だった。優勝を決めた瞬間、マウンドにいたのは斎藤と同じ2年生の田中将大である。しかし、このときの斎藤にはまだ田中の姿は見えていない。

「日本一を目指すとは言ってましたけど、まだ本気で戦う感覚はなくて、日大三高という全国レベルのチームを倒そうということしか考えられませんでした。日本一への距離は果てしなく遠く感じてましたね」

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