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「“日本の運営能力は完璧”の信仰が崩壊」 高くてマズい食事、英語、酷暑…ブラジル人記者が辛辣に語る“東京五輪の問題点”とは
 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byRick Madonik/Getty Images

posted2021/08/07 11:01

「“日本の運営能力は完璧”の信仰が崩壊」 高くてマズい食事、英語、酷暑…ブラジル人記者が辛辣に語る“東京五輪の問題点”とは<Number Web> photograph by Rick Madonik/Getty Images

五輪のMPC内の様子。ブラジル人記者が東京五輪運営の率直な評価を語った

感染者が増えていることは理解しているが……

ファベーロ記者:観衆がいないのがとても残念。観客がいるといないとでは、大会の盛り上がりがまるで違う。過去の五輪では、観衆の声援を力にして選手が驚異的なパフォーマンスを見せることがあり、それが五輪の醍醐味の一つでもあった。

 日本のウイルス感染による死亡者や感染者の数は、南米、欧米と比べると極めて少ない。その一方で、ワクチン接種の遅れ、医療体制の不備といった固有の問題があると聞いた。

 東京などでウイルスの感染者が増えていることは理解しているが、都内でも人々が普通に働き、生活をしているように見える。個人的には、収容人員を制限してもいいから観客を入れて開催してほしかったと思っている。

ラグーナ記者:日本の状況と日本国民の感情を考えると、無観客での開催はやむを得ないだろう。もしこれが日本以外の国であれば、今回の五輪開催は不可能だったのではないか。辛うじて開催にこぎつけた日本の人々の努力に敬意を表するよ。

――今大会のブラジル選手のパフォーマンスをどう評価していますか?

ファベーロ記者:とてもいいね。メダル獲得数が過去最多になるのは間違いないだろう。
リオ五輪のために選手強化に励んだ遺産が、まだ残っている。ブラジル五輪委員会(COB)の継続した選手強化が実りつつある。

ラグーナ記者:ブラジル政府は、COBへの援助を年々、増やしている。その資金を使って、COBは選手強化に努めている。

 たとえば、昨年3月以降、コロナ禍で国内のスポーツ施設が閉鎖されて選手たちが全く練習できなくなると、COBは20以上の種目の200人以上の五輪代表候補をポルトガルへ送って異例の長期合宿をさせた。

サーフィンに対する「地元びいき」判定については?

――ブラジル国内では、男子サーフィンのガブリエル・メジーナ(注:2014年と2018年の世界王者で、カリスマ的な人気がある)が準決勝で五十嵐カノアに敗れた際の判定について、「地元びいき」とか「不公平だ」といった声がありました。

ラグーナ記者:すべての採点競技では、常に異論が出るものだ。しかし、サーフィンのことを碌に知らない人が、ブラジル人の世界王者が日本人に負けたからといって判定に文句を付けるのは間違っている。そんな愚かなことを言う人がいるのが、私には恥ずかしいよ。

――ジョージアの柔道の銀メダリスト2人が選手村から無断で外出して帰国を余儀なくされたり、オーストラリアやニュージーランドの選手が帰国の機内で過度の飲酒をして騒ぐなど、一部の選手が問題行動を起こしています。これまでのところ、ブラジル人選手のトラブルは報じられていないようですが……。

【次ページ】 競技運営、気候、食事については手厳しい声が続出

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