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バド混合で初のメダル獲得! 出会いは中学校、結成10年の渡辺勇大&東野有紗が築いたコンビ愛「信頼度100%」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byJIJI PRESS
posted2021/07/30 20:00
バドミントン混合ダブルスで初のメダル獲得となった渡辺・東野ペア。結成10年で掴んだ銅メダルだった
2人の転機は3年前に遡る。
以前は、己の肉体を駆使して、自分たちのやりたいことだけを最初から最後まで100%出し切るという本能的な動きでプレーすることが多かった。
だが、個々の能力だけではどうしても限界があった。2017年まではワールドツアーで軒並み1回戦敗退が続き、自分たちの殻を破れずにいた。
「彼がいなかったら、僕らは間違いなくここにいない」
渡辺が以前そう言っていた“彼”とは、2018年1月に混合ダブルスの専任コーチとして、日本バドミントン協会がマレーシアから招聘したジェレミー・ガン氏のことだ。
専任コーチ就任2カ月後、渡辺と東野はバドミントンで最も歴史があり、格式の高い全英オープンを制し日本混合ダブルス史上初の快挙を成し遂げると、全英オープン前は48位だった世界ランキングも、ひと桁台に上昇。近年はその順位をキープしてきた。
ジェレミー氏が就任するまで混合ダブルスの指導をほとんど受ける機会がなかった。2人の特性を理解したジェレミー氏の的確な指導に導かれ、ペアとしての能力が一気に開花した。就任以降、とにかく徹底的に頭を使ったプレーやゲームプランニングを叩き込まれた。
「相手の嫌がること」「パートナーを生かすこと」
渡辺もその発想の転換が大きかったと過去に話していた。
「ジェレミーさんが来てから、自分たちのやりたいこともそうですが、相手の嫌がることやパートナーを生かすことも非常に重要だということを教わりました。それに、常に100%なんじゃなくて、80%でも点数が取れるならそのラリーは成功だし、常に100%よりも勝負どころで100%とか110%の力を出せた方が相手にとっては脅威だと」
それまでは球を打ち、相手の返球を打ち返して……というように「とにかく一生懸命動いて点を取りに行く感じが多かった」(渡辺)が、次第に試合展開を予測し、プレーするようになった。さらに緩急をつけたプレーも身に付け、自分たちがやりたいプレーを最後まで続けられるようになった。
さらにジェレミー氏からはペアの間でのコミュニケーションを大切さもアドバイスされたという。
もちろんコミュニケーションを取っていなかったというわけではない。ただ、2018年の全英オープン以前は、積極的に会話を取るというよりも、あうんの呼吸でプレーするという感じだった。「よりコミュニケーションを取ることで、勇大くんがこんなことを考えていたのかとか、新しい発見もあって。勇大くんの思いを知ることで、自分自身もやりやすくなったと感じました」と東野は以前明かしていた。