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松山英樹に“巨大なアドバンテージ?” 慣れ親しんだゴルフ場で挑む東京五輪「カスミは人生が変わった場所なので」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byShizuka Minami
posted2021/07/28 11:04
ヘッドコーチを務める丸山茂樹(中央)と言葉をかわす松山英樹、星野陸也。男子ゴルフは7月29日から4日間にわたって行われる
松山自身の五輪に対する想いは、少々複雑で、「メジャータイトルを目指すのと同じレベルで金メダルを目指す」という意味ではない。ゴルフは2016年のリオ五輪で112年ぶりに五輪競技に復活した。つまり、松山や今の時代を生きる現役世代の選手たちは、ゴルフが五輪競技に含まれていない環境で生まれ育ち、金メダルを目指すことは、それまでは考えたことすらなかった。それなのに突然、「五輪で金メダルを目指せ」と言われても困惑してしまう。
「五輪を目指している人にはメチャ失礼ですけど、僕らは五輪がすべてではない。五輪にすべてを捧げているわけじゃないし、そこをメインにやっているわけでもない」
しかし、霞ヶ関CCが舞台になる東京五輪だからこそ、特別な想いを抱いている。
松山は2009年に霞ヶ関CCで開催された日本ジュニアで勝利した経験がある。翌2010年には、やはりこの地で開催されたアジア・アマチュア選手権(現アジア・パシフィック・アマチュア選手権)でも勝利を挙げ、その資格で翌年のマスターズに出場。ローアマに輝いて世界にその存在を知られるようになった。
そして今年は、そのマスターズを制覇し、メジャー初優勝を果たした。
「11年前のアジア・アマで勝って、マスターズに出て、今年のマスターズで優勝した。カスミ(霞ヶ関CC)は自分の人生が変わった場所、思い出のある場所なので、また変われたらいいなと思います」
霞ヶ関を熟知する松山
霞ヶ関CCは36ホールを擁しており、東京五輪の舞台になるのは2016年に大幅改修された東コースだ。2017年に米国のトランプ大統領と日本の安倍首相(共に当時)が霞ヶ関で繰り広げたゴルフ外交の舞台は東コースで、その際、松山は2人のお供として東コースを回った。
過去に勝利したアジア・アマの舞台は西コースだったが、日本ジュニアでは東コースで勝利している。東京五輪に出場する全選手の中で、霞ヶ関の空気や土や芝を最も多く経験し、最も熟知しているのが松山であることは間違いない。
欧米メディアが「マツヤマは巨大なアドバンテージを持っている」と指摘する背景には、そんな事情がある。