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堀米雄斗の“バキバキの腹筋”は「板に乗る」ことだけで鍛えられた…中学3年でライダーとして覚醒できたワケ《スケートボード金メダル》
posted2021/07/26 11:01
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
MURAKEN
日本で芽吹いた才能がアメリカの空気を吸って花開く。テニスの錦織圭やバスケットボールの八村塁と同じことが、スケートボードの世界でも起こっている。
「アメリカでプロになるのがずっと夢だった」
堀米雄斗(XFLAG)は高校を卒業してから海を渡った。西海岸に拠点を移して本場で滑りを磨き、昨年5月には「ストリートリーグ(SLS)」のロンドン大会で日本人初優勝。日本人が足を踏み入れることすら難しかった最高峰のコンテストでこれまで4勝を挙げている。
9月にサンパウロで行われた世界選手権でも高難度のトリックを次々に繰り出して2位となった。近年のコンテストシーンを牛耳ってきたスーパースター、ナイジャ・ヒューストン(米国)に逆転を許しての惜敗だったが、海外でも確たる地位を築いて堂々の東京五輪金メダル候補である。
「五輪競技に決まるまでは当然意識もしてなかった。でも地元の東京で五輪があって、そこに出られるチャンスがあるなら、出たい気持ちは強くなる。友達や家族に最高のパフォーマンスを見てもらいたい」
ひたすら板の上で鍛えられた腹筋。
IOCが東京五輪の追加種目にスケートボードを選んだのは、若年層への訴求力の高さが要因とも言われている。果たしてスポーツなのかと訝しむ人がいるなら、Tシャツの裾からのぞく堀米の腹を見てみればいい。
トレーニングではなく、ひたすら板に乗ることで鍛えられたという腹筋は、紛れもなくアスリートのそれだ。常に怪我の危険や恐怖心とも隣り合わせ。彼らは「自分との戦い」を乗り越えた上で、常人では不可能なトリックを易々と決めている。
「出会った時は本当にスケート小僧という雰囲気でした。他の遊びは何も知らないって感じでね」
スケートボードブランド「TUFLEG」を主宰する立本和樹は、堀米が小学生だった時に初めて会い、そんな印象を抱いた。それから数年間は一緒に滑り、各地でのデモイベントにも連れていったときもあった。バーチカル(U字型や半円状のハーフパイプを使った種目)が主だった堀米を、最初にストリート(街中にある階段や手すり、縁石などを模したコースを使う種目)のコンテストに誘ったのも立本である。
「その大会の時に、予選前の公開練習で雄斗が結構ひどい捻挫をしたんですよ。滑りの調子は悪いし、超痛そうだったからやめた方がいいよと言ったけど、『いや、出る!』と言い張って。結果は散々で泣きじゃくってましたけどね」