令和の野球探訪BACK NUMBER
ハンカチ世代の監督が高校野球界に新風?「投手が一番伸びる」“餅は餅屋”の発想とは <前橋育英・健大高崎・桐生第一の牙城を崩すか>
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/07/15 11:02
北川トレーナー(左から3番目)のジムに出向く関東学園大附の羽鳥監督と石原、篠原両投手
現在も定期的に練習に参加を依頼し、時には北川氏のもとに選手を連れて行く。監督自身も指導を伝授されたことで、同氏がいない時でも投手に対して適切な指導ができている。
熱意のあまり、ついつい意固地なる指導者も少なくない中、羽鳥監督は第三者の助言について聞いても「抵抗は全くありません」ときっぱり答える。もともと選手には「YouTubeで野球の動画を観ろ」と伝えており、その中で「今、それをやるべきか」を対話しながら練習に取り組む。
また、北川氏と出会う前も、選手が外部の指導を受けに行くことには寛容で「行っておいで。そこで教わったものを俺にも教えてね」と許可していたほどだ。
「指導者が成長していかないとチームは成長していきません。だから学びへの意欲が尽きることはありません。自分自身は大した選手ではなかったですし、オタク気質なのでトコトン突き詰めたいんです」
打線の軸となる2人の捕手も育成
もちろん、チームの強さは投手力だけではない。自身も経験豊富な捕手についての育成には最も自信を持っており、近年では、後逸が極めて少なく、送球やリードが良い捕手を毎年のように育成。今年の3年生では、福岡莉空と根岸拳心の2人はどちらがマスクを被っても遜色のないレベルにまで育て上げた(外野守備も上手い根岸は右翼手に回ることが多い)。
また打線もこの2人が中心となっており、群馬大会では桐生第一を12-0で破るなど6試合43得点を挙げており、戦力は充実している。
「指導者になったばかりの頃は“挨拶と返事ができる人は世の中で通用する”とばかり言っていました。でも最近は“コミュニケーションとセルフマネジメントができることが大事だ”と言っています。140キロ以上の球を投げる能力は一般社会では使わないけど、その過程でどう考えて、どのように取捨選択をして努力をしたのかという能力が、世の中に出た時に必要になってくる。社会の歯車にただなるのではなくてそういう部分ができないと、今の時代は出世もできないし給料も上がらない。だから、自分や周りの環境をマネジメントする能力を身に付けることが大事なんです」
監督の考えを押し付けるだけではなく、選手に考えさせ、監督自身も学び続ける関東学園大附。彼らの躍進には、新たな潮流を生み出す可能性が大いに秘められている。