令和の野球探訪BACK NUMBER
ハンカチ世代の監督が高校野球界に新風?「投手が一番伸びる」“餅は餅屋”の発想とは <前橋育英・健大高崎・桐生第一の牙城を崩すか>
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/07/15 11:02
北川トレーナー(左から3番目)のジムに出向く関東学園大附の羽鳥監督と石原、篠原両投手
際立つのは投手力だ。事実、関東大会でも桐光学園高(神奈川)を相手に0-1という接戦に持ち込んでいる。
春の県大会でエースナンバーを付けた石原勇斗(3年)は身長168センチと小柄ながら最速144キロのストレートとキレのある変化球を投じ、東京の強豪大学への進学が決まっている。関東大会でエースナンバーを付けた篠原正紀(3年)は肩甲骨を柔らかく使い最速146キロを計測しプロ志望、2年生の堀越蒼空(あおい)も142キロを計測していて既にプロ注目の存在だ。
石原は「(関東学園大附に)来て良かったと心の底から思えます。群馬で投手が一番伸びる高校です」と胸を張って答える。
この投手育成力には羽鳥監督の“ある人物”への弟子入りが大きな要因となっている。
前橋商業に競り負けて感じたこと
きっかけは2年前の夏だった。準決勝まで勝ち進んだものの、井上温大(巨人)を擁する前橋商業に2-3と競り負けた。
「ある程度、勝負できる投手は作れていたのですが、相手を圧倒するほどの投手を育てないと甲子園には行けないと思いました」(羽鳥監督)
そこで羽鳥監督は投球フォームや練習法の前提にある根本的な体の仕組みに興味を持つようになった。さまざまな学習をする中で、一番しっくりと来たのが北川雄介トレーナーの指導理論だった。
きっかけは昨年に同校からプロ志望届を提出した西濱勇星(投手・群馬ダイヤモンドペガサス)に「北川さんを呼んでいいですか?」と提案されたことだった。独自で積み上げた理論をもとに「筋肉や関節の動きやすい状態を作ること」に長け、プロアマ問わず多くの選手に慕われる北川氏の指導に触れた羽鳥監督は感銘を受け、“弟子入り”までしたという。
「選手に“こうやってやれ”と言っても可動域が狭かったり感覚がないと、言われてもできないんです。でも、北川さんは“この動作をするためには、こういうことが必要だ”と根本的なことを理解させてくれる。それに、その指導法を“先生でもできるようになりますよ”と、教えてくれるんです」