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内村航平が4大会連続五輪を決めた「0.001点」の分かれ目 種目別初の金メダルに“離れ技の加点”が効く?
posted2021/07/05 11:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO SPORT
体操の東京五輪代表選考会を兼ねた全日本種目別選手権が6月5、6日に行なわれ、種目別鉄棒に絞って挑んだ内村航平(ジョイカル)が、個人出場枠での代表の座を勝ち取った。内村は2008年北京五輪から4大会連続出場。1952年ヘルシンキ五輪から'64年東京五輪まで4大会に連続出場した小野喬に並ぶ日本体操界の五輪最多出場だ。
「冷静に見て4大会連続はすごいなと思う」。言葉に実感を込めた。
険しく、難しい道のりだった。五輪代表入りを懸けて選考会に臨んだのは北京以来。'12年ロンドン、'16年リオは前年の世界選手権での個人総合金メダル獲得により、前年に代表内定が出ていた。だが今回は鉄棒のみの挑戦であり、他種目でカバーすることができないため、重圧があったのだろう。
ポイント争いで跳馬の米倉英信が食らいつき、一つのミスも許されない状況で迎えた全日本種目別選手権決勝。内村は「アドラー1回ひねり」の倒立で車輪を戻してしまうミスをした。「五輪が懸かっている代表選考には、特別な何かがあるとしか思えなかった」と語る表情に消耗の色が浮かんでいた。
「着地は絶対に止めなければと思った」
それでも終わってみれば0.001点という超僅差での代表入り。
「どんなに打ちのめされても」(内村)這い上がり、大目標をかなえた原動力は、伝家の宝刀ともいえる完璧な着地だ。振り返ればリオ五輪男子個人総合でベルニャエフに0.099点差で競り勝った時も最後の鉄棒の着地が差を生んだ。米倉と競った最後の演技では、「アドラーで戻った時に0.5点減点されると思い、着地は絶対に止めなければと思った」と気力で踏ん張った。米倉は着地でわずかに弾んでいた。
東京五輪の種目別鉄棒決勝は、7月24日の団体総合予選から10日後の8月3日に行なわれる。代表選考試合での内村は、技の難度を示すDスコア6.6点の演技構成で戦ってきたが、離れ技を連続させて0.2点の加点を得る構成も既に視野に入れており、ライバルの動向を見て決勝の演技構成を決めることができる状況だ。
これまで団体総合、個人総合で計3個の金メダルを獲ってきた内村だが、種目別は'12年ロンドン五輪ゆかの銀メダルしかない。目指すは種目別初の金メダル。完璧な着地の先に栄光が待っている。