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ミスをした小学生がチームメイトに“土下座”… 日本スポーツ界にはびこる欧米ではあり得ない「支配」という光景 

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佐伯夕利子

佐伯夕利子Yuriko Saeki

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posted2021/06/26 11:01

ミスをした小学生がチームメイトに“土下座”… 日本スポーツ界にはびこる欧米ではあり得ない「支配」という光景<Number Web> photograph by Getty Images

日本スポーツ界には優秀な指導者が多くいる一方で、スペインではあり得ないような光景も度々見かけるという(写真はイメージです)

過度な練習量も、「支配」の表れではないか

 大人が子どもに土下座をさせたのかどうかはわかりません。しかしながら、関係性が対等であれば、コーチもさせないし、子どももやらない。起こり得ないことです。

 以前から部活動の休養日の義務づけや練習時間の制限など、日本におけるスポーツのあり方や見直しが話題になっています。そのなかであまり聞こえてこないのが、少年スポーツの練習時間の長さです。

 この過度な練習量も、指導者による「支配」の表れではないでしょうか。

主体は「子どもたち」であるはず

(私は)「子どもたちを勝たせるためにいっぱい練習させる」

(僕は)「チームを強くするために練習させる」

 いずれも、主語の(私は)(僕は)は、指導者です。

 しかし、「選手の学びの機会を創出するファシリテーター」が指導者であるのなら、その学びの機会を享受する選手は活動の「主体」です。つまり、「主語」になるのです。

「私は(僕は)勝ちたいから、いっぱい練習する」と、子どもが主体的に考えて動くことが当然の帰結かと思います。

 日本でも「アスリート・センタード・コーチング」という言葉で、「選手を真ん中にした指導を」と唱える人が増え始めています。なかには「私たちは、子どもたちが勝ちたいというから、やらせている」と言う人もいますが、ここも同じ。主語は大人たちです。

 もし子どもがもっとやりたいと言っても、故障やバーンアウト(焼え尽きること)を回避するため科学的に適切な強度のトレーニングを施す責任が大人にはあります。

 ビジネスの現場でも、上司が命じてやらせるのではなく、社員が自ら取り組みたくなる環境整備をするのが本質だと思います。

(【続きを読む】日本人は本当に練習しすぎ? 「トレーニングを90分で収める」スペインと「練習は裏切らない」日本の大きすぎる差 へ)

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