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「試合に出られないならやめろ!」スポーツ界でも“毒親”たちの“虐待”が…重圧で「眠れない」と泣く子どもも
posted2021/05/28 06:00
text by
島沢優子Yuko Shimazawa
photograph by
Getty Images
これは過干渉というより、虐待ではないか――そう感じた取材がある。
首都圏に住む女性は、サッカークラブでプレーする小学6年生の娘
「過干渉で困っています」
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夫は、高学年になってベンチにいることが増えた娘に対し「先発で出られないならサッカーをやめろ」となじった。なかなか試合に出られないわが子に苛立つようだ。練習や試合を見に行っては帰宅した娘に「もっと走れよ」と説教三昧。「自主練しろ」「朝練やったのか?」と厳しく迫り、「試合に出られないならやめろ」と言い放つ。
「練習や試合の前夜になると眠れないと泣いて訴えます。このままでは娘が壊れてしまう」
「プロを目指さないなら高い金を出す意味がない」
彼女の話を聴きながら、これはデジャブかと思った。
少年スポーツの現場を十数年取材するなかで、3年ほど前に似た状況の母親を取材したからだ。彼女もサッカークラブでプレーする中学生の息子への父親の対応に手を焼いていた。母親は「もともと男の子は厳しく育てるものだという人でしたが、ことサッカーになると特に攻撃的になる」と困り果てていた。
父親は「プロを目指さないならやる意味がない。親が高い金を出している意味がない」と言って、息子を追い詰めた。サッカー未経験者ではあるが息子が小学生のときは少年団でボランティアコーチをしていたそうで、「頑張れば何でもできるんだぞ」と励ますときもあった。だが、公式戦に出られないと「来週でやめろ」と怒り出す。息子はサッカーのときも、家でも、ほとんど笑わなくなった。
母親が「本人の好きなようにさせて」と話すと、父親は激高した。「おまえは自分の子どもの将来を本気で考えてやっているのか!」と聞く耳を持たない。母親は「どこまで行っても平行線なので、もう離婚するしかない」と話していたが、その後連絡が途絶えてしまった。
学業成績の結果いかんで子どもに過度な圧をかける「教育虐待」は知られているが、スポーツの世界にも毒親は存在する。思うように結果を出せないと激高し、言葉や態度で子どもを傷つける。本人は息子、娘のために良かれと思って一生懸命だが、その熱や期待は子どもたちにとってプレッシャーでしかない。親たちの子ども時代はスポーツの指導で暴力やパワハラが当たり前だったため、教育虐待以上の根深さがある。