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「憧れの存在」高橋大輔のアイスダンス転向に「絶対負けちゃだめだ」 小松原美里・尊組が見せた“第一人者”の意地
posted2021/04/18 11:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
コロナ禍に大きな影響を受けたフィギュアスケートも2020-2021シーズンが終わろうとしている。
今シーズンは新たな動きがいくつも起こった。その1つはアイスダンスに脚光が集まったことだ。きっかけとなったのは高橋大輔がシングルから転向、村元哉中と組んで挑戦したこと。そのインパクトだけでなく、結成して短い練習期間ながらそれぞれの持つ魅力をいかしていく、見ていて今後の可能性を感じさせる演技を披露した。
これまではなかった地上波での中継も行われた。より多くの注目が集まるようになったアイスダンスだが、日本でその第一人者たる実績を残してきたのは、小松原美里、小松原尊組だった。
2016年5月にアイスダンスのパートナーとなり翌年結婚。尊はアメリカ出身で元の名前はティム・コレト。昨年11月に帰化し、全日本選手権から小松原尊として出場している。コレトとして出場したNHK杯と新たな一歩となった全日本選手権で優勝。先日の世界選手権では19位で北京五輪の日本の出場枠1を獲得し、重責を果たした。
挫折を乗り越えて果たした雪辱
「眠れませんでした」と世界選手権フリーダンスの前夜を振り返る美里にとって、その舞台は2年越しの雪辱を果たし、それまでのアイスダンスに懸けてきた思いを結実させた場所になった。
小松原美里がスケートを始めたのは9歳の頃。フィギュアスケートの世界だと決して早くはないスタートになる。きっかけとなったのは同郷岡山の高橋だった。その活躍に刺激を受け、キャリアの一歩を踏み出した。
しばらくはシングルに打ち込むが、15歳でアイスダンスに転向。イタリアの選手と組んで同国の所属として活動後、尊と出会った。出会って相性のよさを感じ取り、一緒に競技に向かうことを決めた。
2人で滑るため、シングルとは異なる難しさがある。お互いの意思を確認し、合わせ、それぞれのよさを引き出すことを心がけ、高めていく。その過程を共有する相手を見つけるのは簡単ではないため、短期間で解消することもある。その困難も乗り越えていけるとお互いに見出したパートナーだった。